ホンダ・S500

S500 (エスごひゃく) - 本田技研工業の小型スポーツカー

概要

S500は本田技研工業が1963年に市場に導入した小型スポーツカーです。この車両は、当時の日本の自動車業界の状況を背景に生まれました。1961年、日本の通商産業省は自動車業界への新規参入を制限する動きを見せました。これに対抗する形で、本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏は、再編案が実施される前に四輪車の開発を行うように指示しました。

1962年10月、第9回全日本自動車ショーでS360とスポーツ500を展示しましたが、S360は開発中止が決定し、スポーツ500はS500として1963年10月に発売されました。販売価格は45万9,000円に設定されており、これは市場調査による価格クイズの結果を考慮したものでした。

生産状況

S500の生産・販売期間は短く、わずか数ヶ月でその後継モデルのS600が1964年1月に発売されたため、早々に市場から姿を消しました。しかし、S500の実際のデリバリーは、1964年1月から始まり、S600は同年3月からとなっています。さらに、開発段階での量産試作車が一部の顧客に渡ったという報告もあり、その詳細は『Old-timer』誌により確認されています。

生産された台数はおそらく500台前後とされ、正式な記録は残されていません。輸出されることはありませんでしたが、テストを目的にした2台の左ハンドル仕様がアメリカに送られ、その後のモデルにも影響を与えたと考えられています。これらは日本仕様が輸出されたもので、現在も一部は国外に存在しています。

スタイル・機構

S500のデザインとメカニズムには、ホンダが2輪車メーカーとしての技術を活かした点が見受けられます。リヤ・サスペンションには独立式のトレーリングアームが採用され、ファイナルドライブにはローラーチェーン方式が用いられています。この技術により、後輪の配置が効率的になり、トランクスペースを広げることにも成功しています。この設計思想は、後に登場したS800にも引き継がれました。

エンジンは水冷の直列4気筒DOHCを搭載しており、排気量は531ccで、最高出力は44PSを達成しています。これにより、スポーティな走行性能を実現しています。

デザイン

S500のデザインは、英国のスポーツカーからの影響を受けつつも、本田内での実績が豊富なデザイナー、森泰助が担当しました。彼のデザインには、本田宗一郎による手直しが加わったとされています。また、当時日本国内には質の良い幌が不足していたため、英国から輸入したものが使用されています。

全体として、S500は本田技研工業の革新的な技術とスポーツカーとしての美しさを兼ね備えたモデルであり、その魅力は今日でも多くの自動車ファンに支持されています。

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