ボアアップ

ボアアップ：レシプロエンジンの排気量拡大

レシプロエンジンのパワーアップは、吸入空気量と燃料供給量の増加が鍵となります。その手段として、過給、回転数の上限拡大、そして排気量拡大が挙げられます。排気量拡大には、気筒数の増加、シリンダーボア（内径）の拡大、ピストンストロークの延長などがあります。

ボアアップとは、その中でもシリンダーボアとピストン径を大きくする手法を指します。単なるピストンのオーバーサイズ交換による僅かな排気量変化とは異なり、より大幅な出力向上を目指します。反対に、ボアとピストン径を縮小する場合はボアダウンと呼ばれます。なお、ロータリーエンジンなど、レシプロエンジン以外のエンジンには適用されません。

ボアアップのメリット

ボアアップの最大のメリットは、比較的低コストで排気量を拡大できる点です。適切な組み上げと、圧縮比、潤滑、冷却システムの最適化により、吸入空気量の増加に伴うトルクの向上、ひいては馬力増強が期待できます。ただし、回転数の上限が低下しないように注意が必要です。

ストロークアップとの比較

ストローク（ピストンストローク）を伸ばすストロークアップは、クランクシャフトの交換が必要となるため、ボアアップよりも難易度が高く、費用も嵩みがちです。シリンダーブロックの高さやコンロッドの角度制限により、回転数の上限が低下する可能性もあります。極端なロングストローク化には、シリンダーライナーの交換やスペーサーの追加といった高度な技術が必要となり、ハイブロック化と呼ばれることもあります。ボアアップとストロークアップを両方行うことで、より大きな排気量増加を実現しますが、これはスープアップと呼ばれます。

ボアアップの方法

ボアアップには様々な方法があります。自動車メーカーによる改良、ユーザーによる類似エンジン部品の流用、ショップ製パーツの使用など、多様なアプローチが可能です。主な方法としては以下の3つが挙げられます。

1. 同系列エンジンの上位排気量部品の流用: 例えば、ゼファー400のエンジンにゼファー550のピストン、シリンダーライナー、クランクシャフトを組み込むといった方法です。既存の部品を活かすため、比較的容易な方法です。
2. シリンダーボーリングと専用ピストンの製作: シリンダー内径を拡大し、それに合わせたピストンを製作・組み込みます。例えば、SR20DETエンジンにVG30DETTのピストンを組み込むといったケースが考えられます。より高精度な加工技術が必要となります。
3. 上位エンジンのシリンダーブロックへの交換: 1JZ-GTEエンジンに2JZ-GTEのシリンダーブロックを交換するなど、根本的な変更を行う方法です。最も大掛かりな方法ですが、大幅な排気量アップが期待できます。

注意点

ボアアップは、エンジン内部構造に関する深い知識と高度な技術を必要とする作業です。適切な手順と工具を用いずに行うと、エンジンに深刻な損傷を与える可能性があります。専門知識・技術がない場合は、必ず整備工場などの専門家に依頼することをお勧めします。

関連用語

チューニングカー: エンジンの性能向上を目的とした改造を施した自動車
エンジンスワップ: エンジンを丸ごと交換すること
書類チューン: 改造をせずに書類上だけ性能を向上させること
改造車: 車両の構造を変更した自動車

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