ボストン (競走馬)

1833年～1850年'>[ボストン]は、アメリカ合衆国が生んだ伝説的名馬です。45戦中40勝という驚異的な成績を収め、アメリカ競馬史にその名を刻みました。その活躍から、死後105年を経た1955年には、アメリカ殿堂馬に選出されています。これは、1814年生まれのアメリカンエクリプスに次ぐ、殿堂入りした馬の中でも非常に古い時代のことです。さらに、後の名馬レキシントンの父としても知られています。

ボストンの誕生は1833年、バージニア州リッチモンドでした。しかし、彼のキャリアの始まりは、少々変わった経緯からでした。生産者であったウィッカム氏が、ナザニエル氏とのカードゲームで800ドルを失い、その負け金の代わりにボストンを譲渡したのです。そして、ボストンという名前も、馬自身の名前ではなく、そのカードゲームの名前から取られたという逸話も残っています。

その後、ボストンはジョン・ベルチャー氏のもとで調教を受けましたが、ここで彼の凶暴な気性が明らかになります。跳ね回り、騎手を振り落とそうとしたり、レース中に突然止まったり、他の馬に噛み付いたり…調教は困難を極め、去勢も検討されたほどでした。しかし、アーサー・テイラー氏のもとに移籍すると、ボストンの才能が開花します。3歳から10歳で引退するまでの8年間で、彼は40勝もの大記録を達成したのです。

引退後は種牡馬としてケンタッキー州などで活躍しました。しかし、晩年もその凶暴な気性は変わらず、若い頃の怪我により失明も経験します。そして1850年、ボストンは生涯の幕を閉じました。

種牡馬としてのボストンもまた成功を収めました。代表的な産駒には、1850年生まれのレキシントン、そのライバルであるルコント、そして1846年生まれのレッドアイなどがいます。特に、1841年から1843年までの3年間は、アメリカリーディングサイアーの称号を獲得するなど、その血統の優秀さを証明しました。

ボストンの生涯は、類まれな才能と、それを阻む凶暴な気性という対照的な側面を持つ、ドラマチックなものでした。彼の伝説は、アメリカ競馬史に永遠に刻み込まれ、後世の競走馬たちに大きな影響を与え続けます。その圧倒的な戦績と、数々の逸話に彩られた生涯は、今日も多くの人々を魅了し続けています。まさに、伝説の競走馬と呼ぶにふさわしい存在と言えるでしょう。彼の物語は、才能と困難、そして勝利と敗北が複雑に絡み合った、人間ドラマさながらの深みを持っています。ボストンという名馬は、単なる競走馬を超え、アメリカの競馬文化、ひいては歴史そのものを象徴する存在と言えるのではないでしょうか。

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