ボナー・フェラーズ

ボナー・フランク・フェラーズの生涯

ボナー・フランク・フェラーズ（Bonner Frank Fellers、1896年2月7日 - 1973年10月7日）は、アメリカ陸軍の軍人であり、最終階級は准将です。情報将校としての活動と、その後の対日心理戦、そして昭和天皇の戦犯訴追免除への関与で知られています。

軍歴の初期

1916年、陸軍士官学校に入学したフェラーズは、第一次世界大戦の勃発により1918年に繰り上げ卒業となり、沿岸砲兵隊に少尉として配属されました。その後、着実に昇進を重ね、1935年には陸軍指揮幕僚大学を卒業。この頃には、論文「日本兵の心理」を執筆するなど、日本への関心も示していました。

第二次世界大戦での活動

1940年、フェラーズは中東専門のG2（情報）将校として、北アフリカ戦線におけるイギリス軍の動向を観測する任務に就きました。彼は、イギリス軍の情報をアメリカ本国に送っていましたが、その暗号がイタリア軍によって解読されていたため、枢軸国軍はイギリス軍の機密情報を容易に入手することが可能になっていました。

フェラーズの情報は、イギリス軍の兵力、配置、作戦計画など多岐にわたり、枢軸国軍はそれらを元に作戦を展開。ロンメル将軍率いるドイツアフリカ軍団は、フェラーズの情報を最大限に活用し、イギリス軍を圧倒しました。特に、マルタ島への救援作戦は、フェラーズの情報漏洩によって大損害を被っています。

イギリス軍は、フェラーズの暗号が解読されていることを突き止め、彼を「好ましからざる人物」と判断。アメリカ政府も事態を把握し、フェラーズはG2将校の任務を解かれました。しかし、ルーズベルト大統領はフェラーズの報告を重視し、北アフリカへのアメリカ軍の介入を主張しました。

太平洋戦線への転属

その後、フェラーズは太平洋戦線に転属し、ダグラス・マッカーサー大将の総司令部で対日心理戦を担当しました。ここでは、連合国軍翻訳通訳課（ATIS）の協力を得ながら、日本軍の情報を収集し、心理戦を展開。日本本土侵攻作戦の準備にも携わりました。

しかし、フェラーズの日本に関する知識は、過去の旅行経験や書籍からのものであり、日本語の読み書きはできませんでした。そのため、心理戦における彼の役割は、ATISの活動を過大評価したものとして疑問視されています。特に、映画『終戦のエンペラー』では、フェラーズの活動が誇張されているという指摘があります。

戦後のフェラーズ

第二次世界大戦後、フェラーズは軍を退役し、政治活動にも関与しました。彼は、アメリカの極右団体ジョン・バーチ・ソサエティに加入するなど、反共主義者としての側面も持っていました。

また、昭和天皇の戦犯訴追免除に尽力した人物としても知られていますが、近年ではこの点についても疑問視する見解が出ています。フェラーズの活動は、アメリカ国内の政治的な思惑も絡み合った複雑なものであったと考えられます。

ボナー・フランク・フェラーズに関する評価

ボナー・フランク・フェラーズは、その情報漏洩事件によって軍人としての評価は大きく損なわれました。しかし、対日心理戦での活動や、戦後の昭和天皇の戦犯訴追免除への関与など、その後の活動が歴史に大きな影響を与えたことは間違いありません。

彼の生涯は、情報戦の重要性、そして歴史における複雑な政治的駆け引きを理解する上で、重要な事例として捉えることができるでしょう。

参考文献

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