ボノム・リシャール (強襲揚陸艦)

強襲揚陸艦ボノム・リシャール：栄光と終焉の記録

アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦6番艦「ボノム・リシャール(USS Bonhomme Richard, LHD-6)」は、1779年にジョン・ポール・ジョーンズが旗艦としたフリゲートの名を受け継ぐ、歴史に名を刻む艦艇でした。ミシシッピ州パスカグーラで建造され、1998年8月15日に就役。就役式には、ペンシルベニア州選出下院議員ジョン・P・ムーサや海軍長官ジョン・H・ドルトンら要人が多数出席しました。

就役後、ボノム・リシャールは長きに渡りアメリカ海軍の活動を支えました。2006年には、初代ボノム・リシャールの残骸捜索隊の名誉旗艦に任命される栄誉に浴しました。そして2012年からは、日本・佐世保を母港とし、西太平洋地域における活動の中核を担いました。同型艦であるエセックスとのシップスワップを経て、佐世保基地に配備されたのです。

佐世保配備時代、ボノム・リシャールは様々な任務に就きました。日米共同訓練への参加や、災害救援活動への貢献など、その活動範囲は多岐に渡りました。しかしながら、その輝かしい歴史は、予期せぬ出来事によって終焉を迎えることとなります。

2020年7月12日、サンディエゴ海軍基地で係留中だったボノム・リシャールは、大規模な火災に見舞われました。メンテナンス作業中であったため消火設備が作動せず、火災は4日間に渡り猛威を振るい、飛行甲板を含む艦の6割が損傷しました。この事故により、艦の復旧には5～7年と推定25億～32億ドルもの巨額な費用が必要と試算されました。病院船への転用も検討されましたが、新造艦を建造する方が安価であるとの判断から、海軍は同年11月30日、ボノム・リシャールの退役と解体を決定しました。

火災原因については、様々な憶測が飛び交いましたが、徹底的な調査が行われました。そして、2021年4月14日、ボノム・リシャールは退役。その後、同型艦に流用できる機器が撤去された後、テキサス州ガルベストンに曳航され、解体されました。

火災発生を受け、アメリカ海軍は徹底的な調査を実施。放火の可能性も視野に入れ、捜査が行われました。その結果、2021年7月29日、第3艦隊は、火災当時ボノム・リシャールの乗組員だった水兵1人を放火と船舶への故意危害の容疑で訴追したと発表しました。2022年9月19日に始まった裁判は2週間続き、9月30日、判事は被告の水兵を両方の容疑で無罪としました。

ボノム・リシャールの歴史は、その輝かしい活躍と悲劇的な最期によって、人々の記憶に刻まれました。その功績は忘れられることなく、アメリカ海軍の歴史に重要な一章を刻んでいると言えるでしょう。退役と解体は、1隻の艦艇の終焉を示すだけでなく、数々の経験と教訓を未来に残す重要な出来事となりました。この事件は、艦艇のメンテナンス、安全管理、そして人的要因が及ぼす影響について、改めて考えさせる契機となったのです。

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