イッツ・オール・オーヴァー・ナウ

イッツ・オール・オーヴァー・ナウ：ヴァレンティノスからローリング・ストーンズ、そして多くのアーティストへ

1964年、アメリカのR&Bグループ、ヴァレンティノスによって世に送り出された楽曲「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」。ボビー・ウーマックとシャーリー・ウーマックが作詞作曲を手掛けたこの曲は、同年、イギリスを代表するロックバンド、ローリング・ストーンズによってカバーされ、彼らのキャリアにおいて大きな転換点を迎えることとなります。

ヴァレンティノスはハリウッドでレコーディングされたこの曲をシングルとしてリリース。アメリカではBillboard Hot 100で94位、R&Bチャートで21位と、そこそこの人気を獲得しました。しかし、この曲が真に歴史に刻まれることになったのは、ローリング・ストーンズによるカバーバージョンがリリースされた時です。

1964年、北米ツアーのためニューヨークを訪れたローリング・ストーンズは、ラジオ番組へのゲスト出演中、DJからヴァレンティノスの「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」を紹介され、カバーを勧められます。その場で演奏を決意した彼らは、シカゴのチェス・スタジオでレコーディングを行い、シングルとしてリリースしました。B面には「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」が収録され、このシングルはイギリスのチャートで堂々の1位を獲得。ローリング・ストーンズにとって初のナンバーワンヒットとなり、バンドの知名度を飛躍的に向上させました。アメリカでもBillboard Hot 100で26位を記録し、2枚目のスタジオアルバム『12×5』にも収録されています。

メンバーそれぞれの反応は様々でした。キース・リチャーズは「俺たちのシングルの中で最高のものだと思う」と絶賛した一方、ブライアン・ジョーンズはやや否定的な意見を述べています。ミック・ジャガーは、この曲を勧めたDJに対して当初は否定的な見解を持っていましたが、結果的には「いいものをくれた」と感謝の言葉を述べています。また、プレスからは「カントリーっぽい」と評されたこともありましたが、メンバーは自身の音楽性と矛盾するものではないと反論しています。さらに、リチャーズはジョン・レノンからギターソロを酷評されたというエピソードも明かしています。

「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」は、ローリング・ストーンズのコンサートでも長年にわたって演奏され続け、彼らの代表曲の一つとして確固たる地位を築いています。1964年から1965年、1967年、1973年、1994年から1995年、2007年、そして2012年から2014年まで、様々なツアーで観客を魅了してきました。

この曲はローリング・ストーンズだけでなく、多くのアーティストによってカバーされています。ウェイロン・ジェニングス、ロッド・スチュワート、ライ・クーダー、ボビー・ウーマック、ジョニー・ウィンター、モリー・ハチェット、リッキー・ネルソン、ダーティー・ダズン・ブラス・バンド、ソーシャル・ディストーション、リバース・ブラス・バンド、ブリンズリー・シュウォーツ、そしてトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズなど、多様なアーティストがそれぞれの解釈でこの曲を演奏し、新たな魅力を生み出しています。

「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ」は、時代を超えて愛され続ける名曲として、音楽史にその名を刻んでいます。ヴァレンティノスのオリジナルバージョン、ローリング・ストーンズによるカバー、そして数多くのアーティストによる解釈を通して、この曲の普遍的な魅力と深遠な意味が、今もなお人々の心を捉え続けているのです。

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