ボフスラーウ連隊

ボフスラーウ連隊は、17世紀末から18世紀初頭にかけて、右岸ウクライナに存在したコサックの連隊組織です。この連隊は、単なる軍事単位としてだけでなく、コサック国家における重要な行政単位としても機能していました。連隊の名称は、その中心地であったボフスラーウ町に由来します。

1685年から1712年まで、ボフスラーウは連隊庁の所在地として機能し、地域の政治、軍事、社会の中心でした。連隊は通常、4つの百人隊（ сотня）と呼ばれる下位区分で構成されていました。これらの百人隊は、連隊の軍事力を構成する基本的な単位であり、それぞれの地域社会から兵士を徴集し、訓練、装備を提供していました。

ボフスラーウ連隊の編成は、当時のウクライナ・コサック社会において重要な役割を果たしたイヴァン・マゼーパによって主導されました。マゼーパは、コサックの自治権を強化し、ヘーチマン国家の安定を図るために、連隊制度を積極的に活用しました。彼は、有能な指導者を連隊長に任命し、連隊の軍事力と行政能力の向上に努めました。

しかし、ボフスラーウ連隊の歴史は長くは続きませんでした。1711年に締結されたプルト平和条約の結果、右岸ウクライナはポーランド・リトアニア共和国の支配下に戻ることになりました。これに伴い、1712年、ポーランド政府はボフスラーウ連隊を含む右岸ウクライナのコサック連隊を廃止しました。これにより、ボフスラーウ連隊は約30年ほどの短い歴史に幕を閉じることとなりました。

ボフスラーウ連隊の歴史は、当時のウクライナ・コサック社会の複雑な政治状況と、周辺大国の影響力を反映しています。連隊の設立と解散は、ウクライナの歴史における重要な転換点であり、その後のウクライナの政治的、社会的な発展に大きな影響を与えました。

参考文献
伊東孝之, 井内敏夫, 中井和夫編　『ポーランド・ウクライナ・バルト史』 (世界各国史; 20)－東京: 山川出版社, 1998年. ISBN 9784634415003
黒川祐次著　『物語ウクライナの歴史 : ヨーロッパ最後の大国』 (中公新書; 1655)－東京 : 中央公論新社, 2002年. ISBN 4121016556
Заруба В.М. Адміністративно-територіальний устрій та адміністрація Війська Запорозького у 1648-1782 рр. – Дніпропетровськ, 2007.
Горобець В. Історія українського козацтва: нариси у 2 т. – Київ: Києво-Могилянська академія, 2006, Т.1. – Полково-сотенний устрій Гетьманату.
* Gajecky, George. The Cossack Administration of the Hetmanate. 2 vols. Cambridge, Mass., 1978.

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