ボラリス

Volaris（ボラリス）は、メキシコ合衆国を拠点とする主要な格安航空会社（LCC）です。メキシコシティのアルバロ・オブレゴン地区サンタフェに本社を構え、主にメキシコ国内各地とアメリカ合衆国西海岸を結ぶ広範なネットワークを展開しています。メキシコの航空市場において、ナショナルフラッグキャリアであるアエロメヒコ航空に次ぐ第2位の規模を誇り、国内線市場で約42%という高いシェアを獲得しています。そのビジネスモデルは、低運賃を軸としながらも、後述するような独自のサービスを提供している点に特徴があります。

歴史

Volarisの歴史は、2005年の設立に始まります。翌年の2006年3月、メキシコ国内のトルーカとティフアナを結ぶ路線で商業運航を開始しました。創業に際しては、世界最大のスペイン語メディア企業であるテレビサ、中央アメリカを代表する航空会社の一つであったTACA航空（現在はアビアンカ航空の一部）、そして世界的な富豪であるカルロス・スリム氏率いるインバルサ（保険会社）など、国内外の有力企業が共同で出資を行うという形で、強固な基盤を築きました。

設立当初、Volarisはメキシコシティ国際空港（MEX）の発着枠が限られていることや、利用料が高いことを理由に、同空港への乗り入れを避けていました。しかし、2010年9月、経営破綻したメキシコの航空会社であるアエロカリフォルニアとメキシカーナ航空が運航していた一部の路線を引き継ぐ形で、メキシコシティ国際空港への就航を開始しました。これにより、同空港をハブの一つとして運用するようになります。さらに、2011年3月には、ハブ機能をメキシコ第二の都市であるグアダラハラ国際空港（GDL）へ移転する計画を発表し、ネットワーク戦略の柔軟性を示しました。

国際展開としては、2016年3月にコスタリカ共和国への進出を発表し、子会社であるVolaris Costa Ricaを設立しました。Volaris Costa Ricaは、コスタリカの首都サンホセにあるフアン・サンタマリア国際空港（SJO）を拠点とし、同年11月に営業運航を開始しました。これにより、Volarisグループは中央アメリカ市場への足がかりを得ることとなりました。

サービス

Volarisが一般的な格安航空会社と一線を画す特徴の一つとして、機内サービスの提供が挙げられます。多くのLCCでは機内での飲食物提供を有料としている、あるいは提供しないことが多い中、Volarisではソフトドリンクやスナックに加え、アルコール飲料まで提供されることがあります。これは、同社のスポンサー企業からの提供によるものです。また、機内エンターテインメントとして、オリジナルの機内誌「V」を乗客に提供しています。

かつては、創業当初に拠点としていたトルーカ国際空港（TLC）とメキシコシティ市内を結ぶ無料シャトルバスサービスを提供しており、これもLCCとしては珍しいサービスでしたが、現在は有料サービスに変更されています。

提携

航空アライアンスには加盟していませんが、他社とのコードシェア提携を通じてネットワークを拡大しています。2009年には、アメリカの大手格安航空会社であるサウスウエスト航空（Southwest Airlines）との間でコードシェア運航を開始しました。しかし、サウスウエスト航空がエアトラン航空を買収するという企業戦略の変更に伴い、この提携は2013年2月に解消されました。

その後、2018年1月には、同じくアメリカの格安航空会社であるフロンティア航空（Frontier Airlines）との間で新たなコードシェア契約を締結しました。この提携により、両社の路線網を相互に利用できるようになり、アメリカとメキシコ間の旅行者にさらなる利便性を提供しています。

使用機材

Volarisが運航する航空機は、全て欧州のエアバス社製で統一されています。これにより、整備や運航の効率化を図っています。保有機材は主にエアバスA320ファミリーで構成されており、旅客座席は全てエコノミークラス仕様となっています。

環境性能や燃費効率に優れた新型機材の導入にも積極的です。2016年9月には、エアバスA320neo型機を北米の航空会社として初めて運航を開始しました。また、比較的新しい情報として、2023年6月20日に開催されたパリ航空ショーにおいて、さらに大型のエアバスA321neo型機25機を追加発注することを発表しており、将来的なフリートの拡充と近代化を進めていることが伺えます。

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