ボルタフィルム

ボルタフィルムとは

ボルタフィルムは、1936年にドイツのボルタ・ヴェルケ社が発表した写真フィルムの規格です。同社製のカメラ「ボルタヴィット」と共に登場しました。このフィルムは、35mm幅のフィルムを使用しながら、120フィルムのように裏紙があり、パーフォレーション（フィルムの送りのための穴）がないという特徴を持っています。コダックの828フィルムと似た構造を持ちますが、画面サイズは24×24mmの正方形で、828フィルムよりも小さく、135フィルムの一般的な24×36mm判よりもさらに面積が狭いのが特徴です。

フィルムの構造と特徴

ボルタフィルムは、一見すると135フィルム（一般的な35mmフィルム）と似ていますが、実際には大きな違いがあります。135フィルムはパトローネ（フィルムを保護するケース）に入っており、パーフォレーションがありますが、ボルタフィルムは裏紙付きでパーフォレーションがなく、パトローネに入っていません。また、120フィルムと異なり、フィルムの幅が35mmである点が特徴です。

日本での発展

ボルタフィルムは、発表当初はドイツで使われていましたが、その後、主に日本で発展しました。1938年には、宮川製作所がボルタフィルム用のカメラ「ボルタックス」を発表し、このカメラでは25×25mm判の正方形の画面サイズが採用されました。その後、萩本商会が1948年に発売した「ダン35」も、このサイズを踏襲しました。

生産終了と現状

残念ながら、ボルタフィルムの生産と出荷は既に終了しています。しかし、現在でもボルタフィルムを使うカメラを使用したいという愛好家は多く、そのような人々は135フィルムを裏紙とパトローネに巻き直したり、120フィルムを裁断して使用するなど、様々な工夫を凝らしています。ただし、画面サイズが25×25mmのカメラに135フィルムを使用する場合、パーフォレーションが画像に写り込んでしまう場合があるため、注意が必要です。

ボルタフィルムの歴史

ボルタフィルムは、35mmフィルムの歴史の中で、重要な役割を果たしました。元々映画用フィルムであった35mmフィルムは、1925年にライカが写真用として採用し、その後コダックが1934年に135フィルムを発表しました。ボルタフィルムは、その流れの中で、ドイツのボルタ・ヴェルケ社が独自の規格として発表しました。

しかし、ボルタフィルムが本格的に発展したのは日本でした。当時、GHQの命令で写真用フィルムの生産が制限され、大型フィルムが手に入りにくくなっていたことが、ボルタフィルムの需要を高めたと考えられます。戦後の1948年には萩本商会がダン35を発売しましたが、価格が高かったことと、アメリカ軍の間で普及しなかったことから、販売は伸び悩みました。その後、一光社やマミヤなどがボルタフィルム用のカメラを発売しましたが、やがて135フィルムが主流となり、ボルタフィルムは衰退していきました。

主なフィルムとカメラ

かつては、六和（後のチェリー商事）や愛光商会などがボルタフィルムを製造していました。六和は「みのりパン」ブランドで、愛光商会は「ライトパン」ブランドで、白黒やカラーのフィルムを販売していました。しかし、これらのフィルムも全て生産が終了しています。

ボルタフィルム用のカメラは、ボルタヴィットをはじめ、宮川製作所のボルタックス、萩本商会のダン35など、様々なメーカーから発売されました。これらのカメラは、独自の機構やデザインを持ち、コレクターズアイテムとしても人気があります。

現代におけるボルタフィルム

現在、ボルタフィルムは入手が非常に困難なフィルムとなっています。しかし、愛好家たちは、その独特なフォーマットや歴史に魅せられ、手作りでフィルムを作成したり、古いカメラを修理して使用したりしています。ボルタフィルムは、写真フィルムの歴史における貴重な遺産として、今もなお愛され続けています。

主なフィルム製品

六和（チェリー商事）
みのりパンSS - 白黒ネガフィルム、ISO50, 12枚撮（1995年頃生産終了）
みのりパンS - 白黒ネガフィルム、ISO100, 12枚撮
愛光商会
ライトパンSSS - 白黒ネガフィルム、ISO200, 12枚撮（1963年頃までに生産終了）
ライトパンSS - 白黒ネガフィルム、ISO100, 12枚撮
ライトパンS - 白黒ネガフィルム、ISO50, 12枚撮（1963年頃までに生産終了）
ライトパンカラー - カラーネガフィルム、12枚撮
ライトパンカラーII - カラーネガフィルム、12枚撮

主な写真機

ボルタ
ボルタヴィット（1936年発売）
フォタヴィット（1937年発売）
フォタヴィットII
フォタヴィットIII（1946年発売）
フォタヴィットIV
フォタヴィットV
宮川製作所
ボルタックス（1938年発売） - 25×25mm判12枚撮
ボルタックスII（1940年発売） - 25×25mm判12枚撮
ボルタックスIII（1940年発売） - 25×25mm判12枚撮、135フィルム兼用
ボルタックスF（1940年発売） - 25×25mm判12枚撮
ボルティー（1942年発売） - 24×24mm判12枚撮、スプリングカメラ
ピクニーB（1948年発売）
日東写真光学工業社
ボレックス（1940年発売） - 25×25mm判12枚撮
村上商会
シルバー（1947年発売）
萩本商会
ダン35（1948年発売） - 25×25mm判
ダン35II型（1948年発売）
ダン35M型（1948年発売） - 24×30mm判、135フィルム兼用
ダン35III型（1949年発売） - 24×32mm判12枚撮
東郷堂
ホビックス（1949年発売） - 25×25mm判
丸惣
マルソパテントボックス（1949年発売） - 24×35mm判
マルソ35（1950年前後発売） - 24×36mm判、25×31mm判説あり
マルサン商店
ヤングフレックス（1950年前後発売）
大和光機
ミノン35（1950年発売） - 24×24mm判
一光社
スタート35（1950年発売） - 24×24mm判
スタート35K（1952年発売） - 24×24mm判
スタート35KII（1958年発売） - 24×24mm判
中央写真用品
サニイ（1951年発売） - 24×24mm判、ボルタフィルムで12枚撮、135フィルムで50枚撮
アルバ35（1952年発売）
アルバ35II（1954年発売）
マミヤ
マミヤマミー（1953年発売） - 変形24×28mm判10枚撮
六和
ロッカ
森田商会
* イノカステレオ（1956年発売） - ステレオカメラ、24×24mm判6組12枚撮

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