ボルドー液

ボルドー液とは

ボルドー液は、硫酸銅と消石灰を水に混ぜて作られる、伝統的な殺菌剤です。19世紀末にフランスで発見されて以来、100年以上にわたり、世界中で広く使用されています。その主な成分は塩基性硫酸銅カルシウムで、果樹や野菜など、様々な作物の病害予防に用いられています。

ボルドー液は、その組成によって「4-4式ボルドー」や「6-6式ボルドー」のように表記されることがあります。これは、1リットルの水に対して使用する硫酸銅と生石灰のグラム数を示しています。

また、有機農産物の日本農林規格で利用が認められているため、有機農業においても重要な役割を果たしています。

ボルドー液の概要

ボルドー液は、その歴史の長さにもかかわらず、現代農業においても欠かせない存在です。広範囲の病害に対して優れた予防効果を発揮し、かつ安価であるという利点があります。

農薬便覧には、複数のメーカーからボルドー液の水和剤が販売されており、その需要の高さが伺えます。

ボルドー液の効用

殺菌効果

ボルドー液の殺菌効果は、銅イオンが病原菌の酵素を阻害することによって発揮されます。この効果は糸状菌だけでなく、細菌にも有効です。また、耐性菌が発生しにくいという特徴があり、安定した効果が期待できます。過去には、チャ白星病や水稲いもち病など、ボルドー液が唯一の特効薬であった病気も存在しました。

細菌の侵入防止効果

ボルドー液は、葉や果実の表面を覆うことで、病原菌の侵入を物理的に防ぐ効果があります。この残効性により、病害の発生を長期間抑制することができます。

植物の活性化・抵抗性向上効果

銅イオンは、植物ホルモンの一種であるエチレンの働きを促進し、植物そのものを活性化する作用があると考えられています。また、植物の免疫機構を活性化し、病害への抵抗力を高める効果も認められています。

害虫防除効果

ナメクジやカタツムリなどの害虫は、銅イオンを嫌うことが研究で明らかになっています。そのため、ボルドー液はこれらの害虫の防除にも効果を発揮することが期待されます。

ボルドー液の歴史

ボルドー液は、1882年にフランスの植物学者ミラルデによって発見されました。彼は、ブドウ畑の盗難防止のために硫酸銅と石灰を混ぜた溶液を散布したところ、ブドウがべと病に感染していないことに気づきました。この発見が、ボルドー液の誕生につながりました。

その後、ミラルデは様々な配合で実験を重ね、1885年に論文を発表しました。日本では、1892年に小島銀吉によって初めて紹介され、1897年には茨城県のブドウ園で初めて使用されました。

1985年には、フランスのボルドー市で「ボルドー液100年祭」が開催され、その歴史と重要性が再認識されました。

ボルドー液の調製

ボルドー液は、使用する前に自分で調製する必要があります。一般的な調製方法としては、以下の手順で行います。

1. 生石灰を水で乳化させる。
2. 硫酸銅を水に溶かす。
3. 石灰乳を混ぜながら、硫酸銅溶液を注ぎ入れる。

ただし、最近では、ICボルドーのように、事前に調製されており、水で薄めるだけで使用できる製品も販売されています。これらの製品は、調製の手間を省くことができるため、より手軽にボルドー液を使用することができます。

ボルドー液の危険性

ボルドー液に使用される硫酸銅は劇物に指定されていますが、ボルドー液自体は、通常の使用においては比較的安全性が高いとされています。収穫物に残留するレベルでは、人体への危険性はないとされています。また、有機JAS規格においても、使用が認められています。

ただし、硫酸銅は水生生物に強い毒性を持つため、ボルドー液が河川や湖沼に流入しないように注意する必要があります。また、生石灰は水と反応して発熱するため、取り扱いには注意が必要です。皮膚や目に直接触れると、化学熱傷を引き起こす可能性があります。

さらに、作物によっては薬害を起こす可能性もあるため、使用する際は適切な装備を着用し、用法を遵守することが重要です。

かつては、ボルドー液に水銀化合物を配合した水銀ボルドー液が使用されていた時期もありましたが、水銀の危険性が認識されるようになり、現在では使用されていません。

まとめ

ボルドー液は、100年以上の歴史を持つ伝統的な殺菌剤であり、現代農業においても重要な役割を果たしています。その効果と安全性から、今後も広く利用されることが期待されます。

しかし、使用に際しては、危険性や注意点を理解し、適切な用法を守ることが重要です。また、環境への影響にも配慮し、責任ある使用を心がけましょう。

ボルドー液は、適切に使用すれば、作物の病害を防ぎ、安定した収穫を支える頼もしい味方となるでしょう。

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