ボルボ・260

ボルボ 260シリーズ：安全と高級感を両立したスウェーデンが生んだ名車

ボルボ・260シリーズは、1974年から1982年にかけてスウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズが製造した乗用車です。1968年発表のボルボ164をベースに、1972年に公開された実験安全車Volvo Experimental Safety Car（VESC）で開発された先進的な安全技術を数多く採用したモデルとして知られています。

安全性を追求した設計

260シリーズは、従来モデルよりも前後の衝撃吸収ゾーンを拡大し、安全性の向上を図りました。そのため、前輪サスペンションをストラット式に変更し、エンジンルームも拡大。さらに、ステアリング機構をラック・アンド・ピニオン方式に変更することで、操縦性の向上も実現しています。これらの改良は、安全性と快適性の両立を目指したボルボの技術力の高さを示すものです。

V6エンジンの採用

エンジンには、ルノーとプジョーとの共同開発による2,664cc V型6気筒エンジン（PRVエンジン）を搭載。このエンジンは、ルノー30、プジョー604、ランチア・テーマV6など、他社のモデルにも採用された実績を持つ信頼性の高いものでした。従来のボルボ製直列6気筒エンジンに代わり、より洗練された走りを提供しました。

多様なボディバリエーション

260シリーズは、4ドアセダンの264、5ドアワゴンの265、そして2ドアクーペの262と、複数のボディタイプを用意。それぞれのモデルは、DLとGLの2つのグレード展開がされました。中でも262をベースに、イタリアのコーチビルダー、ベルトーネが製作した高級クーペ、262Cは、そのエレガントなデザインで高い人気を誇りました。アメリカや日本市場への導入は排ガス規制対応の遅れから1975年まで164が輸入されました。

スペシャルモデル：264TE

260シリーズには、リムジンモデルである264TE（Top Executive）も存在しました。このモデルは、1975年から1981年まで製造され、特に東ドイツ政府の公用車として多数採用されました。東ドイツの国家評議会議長であったエーリッヒ・ホーネッカーも、264TEを改造したランドーレットを儀式用車両として使用していたことは有名です。日本にも輸入され、当時の輸入元であった帝人社長夫人もオーナーの一人でした。

日本における販売

日本では、ヤナセから帝人ボルボへと輸入元が変わり、1976年から264の販売が開始されました。当初は、角型ヘッドライトが日本の車検基準に適合しなかったため、米国仕様の丸型4灯式に変更して販売されました。262Cや264TEも輸入されましたが、265は正規輸入されませんでした。高い安全性と信頼性から、240シリーズほどではありませんが、日本で一定数の販売台数を記録しました。その後、ボルボ日本法人、ボルボ・カーズ・ジャパンへと輸入販売元が移行し、日本のユーザーに親しまれるモデルとなりました。

まとめ

ボルボ260シリーズは、安全性を重視した設計、洗練されたV6エンジン、そして多様なボディバリエーションが特徴の、ボルボを代表するモデルの一つです。東ドイツ政府公用車としての採用や、日本市場における一定の成功など、その存在感は世界規模に及ぶものでした。260シリーズは、ボルボの技術力と、安全に対する揺るぎない姿勢を象徴するモデルとして、自動車史にその名を刻んでいます。1982年に後継モデル760が登場したことに伴い生産終了。4気筒モデルである240は1993年まで生産が続けられました。

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