ボルボ・400

ボルボ 400シリーズ：革新と個性を兼ね備えた小型車

スウェーデンの自動車メーカー、ボルボが1986年から1996年にかけて製造販売した小型乗用車シリーズが、ボルボ400シリーズです。オランダのボルボ・カーズBV（後のネッドカー）で生産されたこのシリーズは、480、440、460の3つのモデルで構成され、それぞれに個性的な魅力がありました。

480：先進性とスポーティさを融合

1986年、ジュネーブショーでデビューした480は、シリーズの幕開けを飾るモデルです。特徴的なリトラクタブルヘッドライトと、かつてのP1800シリーズを彷彿とさせるスタイリッシュなボディデザインは、多くの自動車ファンの心を掴みました。

ボルボとしては初のFF（前輪駆動）方式を採用し、エンジンには当時提携関係にあったルノー製の1.721cc F型エンジンを搭載。さらに1988年には、このエンジンにギャレット製のターボチャージャーとインタークーラーを組み合わせたターボモデルが登場し、ポルシェによるチューニングが施された特別なモデルも存在しました。スポーティな走りと、スタイリッシュなデザインが見事に調和したモデルと言えるでしょう。4人乗りの3ドアハッチバックというボディスタイルも、時代の先を行くデザインセンスを感じさせます。

440：実用性を重視した5ドアハッチバック

1988年に登場した440は、480のプラットフォームとシャーシを共有する5ドアハッチバックモデルです。480のスタイリッシュさを継承しつつも、5ドアという実用的なボディスタイルを採用することで、より広いユーザー層への訴求を目指しました。

480と同様にルノー製の1.721cc F型エンジンを搭載し、ターボモデルも設定されました。400シリーズの中では最も生産台数が多く、シリーズの主力モデルとして活躍しました。より広い室内空間と、使い勝手の良い5ドアハッチバックという点が評価され、多くのユーザーから支持を集めたモデルと言えるでしょう。

460：エレガントな4ドアセダン

440のプラットフォームをベースに、リアオーバーハングを延長することで4ドアノッチバックセダンを実現したモデルが、1989年登場の460です。440の使い勝手の良さと、よりフォーマルなセダンとしての風格を兼ね備えており、幅広いニーズに対応できるモデルとして位置づけられました。

エンジンは440と共通の1.721ccエンジンに加え、1.9Lディーゼルエンジンやターボエンジンもラインアップされました。より落ち着いた雰囲気と、上質な乗り心地を求めるユーザー層に支持されたモデルと言えるでしょう。

日本市場と400シリーズ

日本市場においては、480ターボが1989年に300台限定で正規輸入されました。その内訳は左ハンドルMT車が295台、右ハンドルAT車がわずか5台と、非常に希少なモデルとなっています。この事実は、当時の日本の自動車市場における輸入車の状況と、ボルボ400シリーズの個性的な魅力を物語っていると言えるでしょう。

400シリーズの遺産

1994年にはマイナーチェンジを行い、フロントマスクのデザインなどが変更されましたが、1996年に生産が終了。短い期間ながら、ボルボのラインナップに個性的なモデルを提供し、後世にその名を残すシリーズとなりました。ボルボ 400シリーズは、革新的なデザインと、当時としては先進的な技術を採用することで、コンパクトカーという枠にとらわれない、独自の魅力を放つモデルでした。その希少性から、現在ではコレクターズアイテムとしても注目を集めています。

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