ボルボ・850

ボルボ・850：革命的な中型車の軌跡

1991年、ボルボは従来のモデルとは一線を画す革新的な中型車、850を発表しました。セダンとステーションワゴン（エステート）のボディタイプが用意され、1992年から世界各国で販売が開始されました。

5年の歳月をかけた開発と画期的な設計

約5年に及ぶ開発期間を経て誕生した850は、それまでのボルボ車とは大きく異なる設計思想を採用していました。前輪駆動（FWD）レイアウトと直列5気筒エンジンを搭載。このエンジンは、ポルシェが開発に携わった960の直列6気筒エンジンをベースに1気筒分を削減した設計であり、後のボルボ車の設計に多大な影響を与えました。

FWDへの移行は、従来の後輪駆動（FR）モデルが誇っていた、サイズに対して驚くほど小さい回転半径という特性を失う結果となりましたが、ハンドリング性能の向上や車内空間の拡大といったメリットも生み出しました。

デザインとバリエーションの拡充

当初は、伝統的な6ライトスタイルのセダンのみでしたが、1993年にはステーションワゴンが追加されました。ステーションワゴンはセダンを上回る人気を博し、その後のステーションワゴンブームの牽引役となりました。

1994年にはマイナーチェンジを実施。ヘッドライトデザインの変更やバンパー形状の刷新などが行われ、デザインが洗練されました。エンジンバリエーションも拡充され、DOHC 20バルブエンジンやターボチャージャー搭載モデルなど、多彩なラインナップが用意されました。ターボモデルのチューニングはポルシェが担当し、トランスミッションはアイシン・ワーナー製が採用されました。

スポーティなイメージの確立と成功

850は、従来のボルボ車に持たれていた「安全第一だが鈍重」というイメージを一新しました。特に、英国ツーリングカー選手権（BTCC）への戦略的な参戦は、「ボルボ＝スポーティ」というイメージを定着させることに大きく貢献しました。

限定モデルとして発売された高性能ターボモデル、850 T-5Rや850 Rは瞬く間に完売するなど、大きな成功を収めました。日本市場においても、850はステーションワゴンブームの火付け役となり、スバル・レガシィや日産・ステージアといった国産車にも影響を与えたと言われています。

受賞と販売終了

850エステートは、1994年度グッドデザイン大賞を受賞しました。しかし、1997年には、ボルボとしては異例となる6年という短いモデルライフを終えました。ビッグマイナーチェンジを経てS70/V70と改名され、2000年にはフルモデルチェンジによりS60と2代目V70へとバトンタッチされました。

ボルボの歴史における850の意義

ボルボ・850は、伝統を踏襲しつつ、革新的な技術とデザインを取り入れたモデルとして、ボルボの歴史に大きな足跡を残しました。その成功は、後のボルボ車の開発の方向性を示すものとなりました。そして、ステーションワゴン人気を牽引し、スポーティなイメージをボルボに確立させた、重要なモデルと言えるでしょう。

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