ポストイナ鍾乳洞

ポストイナ鍾乳洞：自然が創造した地下の驚異

ポストイナ鍾乳洞（Postojnska Jama）は、スロベニアのポストイナ近郊に位置する、息をのむような美しさを誇る鍾乳洞です。総延長20km以上にも及ぶ洞窟システムは、島洞窟、黒洞窟、ピウカ洞窟、マグダレナ洞窟など複数の洞窟が複雑に連結して形成されており、その規模はスロベニア最大級を誇ります。

形成の歴史

この鍾乳洞は、約200万年の歳月をかけて、ピウカ川の地下水流が石灰岩を侵食することによって誕生しました。現在、洞窟の最も深い場所は115mに達しています。長い年月をかけて自然が作り出したこの地下空間は、まさに地球の芸術作品と言えるでしょう。

発見と歴史

鍾乳洞の入り口は13世紀には既に知られていましたが、その大部分が発見されたのは1818年のことです。当時の皇太子であったフェルディナント1世の訪問準備中に、地元のルカ・チェッチによって発見されました。翌年のフェルディナント1世の訪問を機に、その美しさは広く知れ渡ることとなり、世界中から王侯貴族や多くの観光客が訪れるようになりました。日本からは、有栖川宮威仁親王夫妻、小松宮依仁親王夫妻、高松宮宣仁親王夫妻が訪問しています。

また、1831年にはメクラチビゴミムシが発見されたことで、地下生物の研究が始まり、現在では170種もの生物が生息する、生物多様性のホットスポットとしても知られています。近年では、ホライモリの養殖にも世界で初めて成功し、その生態研究も進められています。

鍾乳洞の魅力

鍾乳洞の入り口には、「旅行者よ、広大な洞窟に入れ」という意味のラテン語が刻まれています。観光コースは約5kmあり、そのうち3.7kmはトロッコ列車で移動します。1872年に単軌道で敷設されたトロッコ列車は、当初は人力で動いていましたが、その後蒸気機関車、そして電化へと進化しました。二線軌道化されたのは1964年で、現在の全線が開通したのは1968年です。

トロッコ列車に乗ると、すぐに鍾乳石や石筍の幻想的な光景が広がります。鍾乳石は上から、石筍は下から成長し、長い年月をかけて両者が繋がると石柱になります。鍾乳石が1mm成長するには10年から30年かかると言われており、その成長の遅さに驚かされます。鍾乳石の中には、ラクダ、ワニ、カメ、オウムなどに見えるものもあり、その姿は訪れる人々を楽しませてくれます。特に白い鍾乳石は「ブリリアント」と呼ばれ、ポストイナ鍾乳洞のシンボルとなっています。

二番目に大きなホールは会議ホールと呼ばれ、トロッコ列車を降りて徒歩で観光を続けます。そこから、大きい山という地下の山を越え、ロシア橋を渡ります。この橋は、第一次世界大戦中にロシア人捕虜によって建設されたものです。

その後、美しい洞窟と呼ばれるエリアへと進みます。ここは、フローストーンやスパゲティと呼ばれる繊細な鍾乳管が美しい、鍾乳洞の中でも最も美しいエリアです。最後に、コンサートホールでは様々なイベントが開催されており、訪れる人々を楽しませています。

観光路の脇には、ホライモリが生息する小さな水溜りがあり、その姿を観察することができます。ホライモリは、肌色の体色と何も食べなくても1年近く生きられることから、「類人魚」とも呼ばれています。

まとめ

ポストイナ鍾乳洞は、自然が長い年月をかけて創造した芸術作品であり、その美しさと規模は世界中の人々を魅了しています。トロッコ列車での移動や、地下の川や橋、そしてユニークな生態系など、見どころ満載のこの鍾乳洞は、スロベニアを訪れる際には必ず訪れたい場所の一つです。

参考文献

ブルーガイド編集部編『ブルーガイドわがまま歩き クロアチア スロヴェニア』実業之日本社、2017年。ISBN 978-4-408-06024-8。
柴宜弘、アンドレイ・ベケシュ、山崎信一編著『スロヴェニアを知るための60章』明石書店、2017年9月10日。ISBN 978-4-7503-4560-4。

関連項目

シュコツィアン[[洞窟群]] - 同じくスロベニア国内にある鍾乳洞。世界遺産に登録されている。
石の花 (坂口尚の漫画)) - ポストイナ鍾乳洞が登場する。

外部リンク

Postojna Cave 公式サイト（英語、ドイツ語、イタリア語、スロベニア語）
地中に広がるカルストの魔術に幻惑されて／ポストイナ鍾乳洞 スロヴェニア・フォト・レポート

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