ポストモダン建築

ポストモダン建築

ポストモダン建築（ポストモダンけんちく）は、1960年代以降に登場した建築スタイルで、「ポストモダン様式」とも呼ばれます。このスタイルは、従来のインターナショナル様式に対する批判から生まれました。合理性と機能性を追求してきたモダニズム建築に対する反発として、装飾性、折衷性、過剰性を回復しようとする試みがなされました。

このような建築スタイルは、ルイス・カーンやロバート・ベンチューリ、フィリップ・ジョンソンなどの建築家によって支持され、古典建築が再評価されました。ポンピドー・センターを手掛けたレンゾ・ピアノや、ロイズ・オブ・ロンドンを設計したリチャード・ロジャースも、古典主義への批判を展開しています。このように、歴史的なデザインや工業化の影響を受けた様々なスタイルが共存しています。

ポストモダン建築は、1980年代に特に流行しました。当初は「ポスト・モダニズム」と呼ばれていたこの言葉は、次第に「ポストモダン」として定着しました。モダニズムの同質性への反発から生まれたこの概念は、一時的なトレンドとして現在ではあまり使用されないようになっています。

モダニズムは合理性と機能性を重視し、その結果都市や建築が味気なくなってしまったという批判が存在しました。この状況を打破するために、アンチ・モダニズムの一環としてポスト・モダニズムの概念が誕生しました。建築理論家のチャールズ・ジェンクスは、このスタイルを「ハイブリッド」かつ「ラディカルな折衷主義」と定義し、建築における二重のコード化、つまり多層的な解釈が存在することを強調しました。

ポストモダン建築では、モダニズムが否定した装飾や象徴性の回復が重要視され、事例としてフィリップ・ジョンソンが手掛けたニューヨークのAT&Tビルでは、古代ギリシャ風のペディメントが装飾として用いられています。これにより、古典主義からの大胆な引用が目立つようになりました。同じくロバート・ヴェンチューリは、俗悪な建築も含めてポストモダンの観点から評価する『ラスベガス Learning from Las Vegas』という著作を発表しました。

その一方で、ポストモダン建築は装飾や過去のデザインの再利用について正当化を求めるため、建築の意味や物語を重視し、この試みは時に批判を招くこともありました。1989年には、ドミニク・ペローのミニマルな設計案がフランス・パリの国立図書館のコンペで優勝し、ポストモダン建築の流行が転機を迎えることとなります。

1990年代以降、建築の傾向はモダニズムの見直しを行い、素材の質を活かした簡素なデザインが増える一方で、脱構築主義的な過剰で複雑なデザインも登場するようになりました。特に隈研吾などは、負ける建築や消える建築の概念も提唱しています。

ポスト・モダニズムの影響を受けた建築は、1980年代以降、思想的にラジカルな近代批判と結びついて、「折衷主義」や「表現主義」という潮流を生み出しました。これらはバブル経済や金満主義とも関連しており、当時の社会背景を反映しています。

代表的なポストモダン建築

• - アメリカ

- 1963年: 母の家（チェスナット・ヒル） - ロバート・ヴェンチューリ
- 1982年: ポートランド市庁舎 - マイケル・グレイヴス
- 1984年: AT&Tビル - フィリップ・ジョンソン

• - フランス

- 1982年: ラ・ヴィレット公園 - ベルナール・チュミ

• - ドイツ

- 1994年: シュトゥットガルト音楽演劇大学 - ジェームズ・スターリング

• - ポーランド

- 1994年: チェンストホヴァ駅 - Ryszard Frankowicz

• - 日本

- 1982年: 直島町役場 - 石井和紘
- 1983年: つくばセンタービル - 磯崎新
- 1984年: 伊豆の長八美術館 - 石山修武
- 1989年: 釧路フィッシャーマンズワーフMOO - 毛綱毅曠
- 1990年: 東京都庁舎 - 丹下健三

こうした建築物に見られるように、ポストモダン建築は単なるスタイルの変化にとどまらず、社会の価値観や時代背景を強く反映した、非常に多様な表現手法をもった建築であると言えるでしょう。

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