ポティダイアの戦い

ポティダイアの戦い：ペロポネソス戦争の序章

紀元前432年から紀元前430年にかけて、アテナイとコリントス、そしてその同盟国であるポティダイアとの間で、激戦が繰り広げられました。このポティダイアの戦いは、前年に勃発したシュボタの海戦と並んで、ペロポネソス戦争の引き金となった重要な出来事として歴史に刻まれています。

戦いの発端：アテナイとコリントスの対立

シュボタの海戦でアテナイとコリントス間の対立が表面化したことを受け、アテナイはコリントスの植民都市でありながらアテナイの同盟国であったポティダイアへの圧力を強めました。アテナイは、ポティダイアに対し、カッサンドラ半島（古代ギリシャ語ではパレネ）に面した防衛壁の撤去と人質の引き渡しを要求しました。さらに、コリントスから派遣される行政官の追放と、将来コリントスからの行政官の受入れ拒否も命じました。

この強硬姿勢の背景には、マケドニア王ペルディッカス2世とコリントスの策略によってポティダイアがアテナイへの反乱を起こし、他のトラキアの同盟国にも反乱が波及することをアテナイが恐れていたことがあります。ペルディッカス2世は、以前アテナイが彼の弟ピリッポスとエリメアの王デルダスを支援したことに反感を抱き、アテナイへの敵対行動を繰り返していました。

軍事的衝突：両軍の動きと戦闘

アテナイは、アルケストラトス率いる艦隊と兵士をペルディッカス2世の領地に派遣しました。その後、ポティダイアの防衛壁の破壊、人質の確保、同盟国の監視強化といった命令が本国から下されました。一方、スパルタからの支援を受けたポティダイアはアテナイのデロス同盟を離脱し、カルキディケ人とボッティケ人と同盟を結び、ペルディッカス2世も彼らに加勢しました。

アテナイ軍は、ポティダイアとマケドニアの両方を同時に相手にできないと判断し、ピリッポスとデルダスと連携して戦う戦略に転じました。コリントスは、アリステウス率いる増援部隊をポティダイアに派遣しました。これに対抗し、アテナイもカリアス2世率いる大規模な増援部隊を派遣しました。

アテナイの増援部隊はまずマケドニアに上陸し、ペルディッカス2世と講和した後、ピリッポス率いるマケドニア騎兵と合流し、ポティダイアへと進軍しました。ポティダイア側はオリュントスに陣を構え、アリステウスを総司令官、ペルディッカス2世を騎兵指揮官に任命しました。

両軍の戦闘は激しく、アリステウス率いるコリントス軍の側面が一時的に優勢に立ちましたが、アテナイ軍が勝利し、敵をポティダイアの城壁内に追い込みました。オリュントスに配備されていたペルディッカス2世率いる部隊も戦闘に参加しましたが、アテナイ軍の勝利が決定的となると、両軍は撤退しました。

ポティダイアの包囲とペロポネソス戦争の勃発

戦闘後、アテナイはポティダイア近郊に防壁を築き、守備隊を配置しました。さらに、パレネ側にも防壁を築き、ポティダイアを南北から封鎖し、海からも艦船で封鎖しました。アリステウスはポティダイアを脱出してカルキディケ地方で抵抗を続けました。

コリントスはスパルタにペロポネソス同盟諸国への召集を要請し、アテナイへの宣戦布告を訴えました。スパルタはアテナイとの和平を模索する声もあったものの、紀元前432年にアテナイへの宣戦を決定し、ペロポネソス戦争が勃発しました。

ポティダイア包囲は長期化し、アテナイの国庫を圧迫しました。アテナイは、紀元前430年の冬、食糧不足に陥ったポティダイアが降伏するまで包囲を続行しました。ポティダイアの住民は故郷を追われ、アテナイ人はポティダイアに入植しました。

ポティダイアの戦いは、ペロポネソス戦争という大規模な戦争の幕開けとなっただけでなく、アテナイとコリントスの長年の対立と、マケドニアの複雑な政治状況が絡み合った、古代ギリシア世界の政治的、軍事的な緊張の高まりを示す象徴的な出来事でした。この戦いの影響は、その後の戦争の展開に大きな影を落としたのです。

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