シュボタの海戦

シュボタの海戦：ペロポネソス戦争の序章

紀元前433年、ギリシャのイオニア海において、ケルキュラ（現代のケルキラ島）とコリントスの連合艦隊が激突する大規模な海戦、シュボタの海戦が勃発しました。この戦いは、後にギリシャ世界を席巻するペロポネソス戦争の直接的な引き金となった重要な出来事として歴史に刻まれています。

戦いの背景：ケルキュラとコリントスの対立

ケルキュラの植民都市エピダムノスで内紛が発生したことが、この海戦の遠因となりました。エピダムノスの勢力の一部が、母都市であるケルキュラに仲裁と支援を要請しましたが、ケルキュラはこれを無視しました。

窮地に陥ったエピダムノスは、デルフォイの神託に従いコリントスに保護を懇願。コリントスは、ケルキュラのこれまでの横柄な態度も踏まえ、エピダムノスへの支援を決定します。コリントスは入植希望者と守備隊をエピダムノスへ派遣し、事実上、エピダムノスを勢力下に置きました。

これに激怒したケルキュラは、コリントス人追放と亡命者の帰還を要求するため、艦隊をエピダムノスへ派遣。しかし、要求が拒否されると、ケルキュラはエピダムノスを包囲します。

コリントスは、同盟国と共に大規模な艦隊を編成し、ケルキュラへ宣戦布告。エピダムノスへ進軍し、ケルキュラ艦隊と最初の戦闘が発生。この戦闘ではケルキュラが勝利し、エピダムノスは降伏しました。

この敗北を受け、コリントスは海軍力の増強に乗り出します。対するケルキュラは、アテナイと相互防衛条約を締結。アテナイから援軍が送られることになります。

コリントスは、各地の同盟国から艦船を集め、大規模な艦隊を編成してケルキュラへと進軍、ケイメリオンに投錨しました。一方、ケルキュラもアテナイの援軍を加えた大艦隊をシュボタ諸島付近に展開しました。

シュボタの海戦：激突と決着

両軍の艦隊はシュボタ諸島沖で激突しました。トゥキュディデスによると、この海戦は当時のギリシャの海戦としては最大規模のものでした。両軍とも、近代的な戦術ではなく、接舷して敵船に乗り込み、白兵戦を展開するような戦闘を行いました。

アテナイ艦隊は、ケルキュラ艦隊を支援しましたが、条約の範囲内で行動し、積極的に戦闘に参加するわけではありませんでした。戦闘は混迷を極め、コリントス艦隊の右翼はケルキュラ艦隊に敗北し、その一部はコリントスの陣営に上陸して略奪を行いました。しかし、コリントス艦隊は数的優勢を活かしてケルキュラ艦隊を押し返しました。

コリントス軍は、捕虜よりも殺戮に重点を置いたため、味方の船も巻き込む混乱が生じました。日没が近づき、アテナイの援軍も加わったケルキュラ艦隊が反撃態勢を整えたため、コリントス艦隊は撤退しました。

ケルキュラは多くの船を失い、多くの戦死者と捕虜を出しましたが、コリントスもかなりの損害を受けました。

戦後の影響とペロポネソス戦争

翌日、両軍は戦勝記念碑を建立し、それぞれが勝利を主張しました。この海戦は、アテナイとコリントスの対立を激化させ、翌年にはポティダイアの戦いへと発展。最終的には、スパルタの宣戦布告を招き、長きにわたるペロポネソス戦争へとつながっていったのです。

シュボタの海戦は、単なる海戦を超えて、古代ギリシャの歴史、特にペロポネソス戦争の勃発に繋がる重要な転換点となった出来事でした。この戦いは、古代ギリシャの政治、軍事、外交の複雑な様相を如実に示しており、歴史研究において重要な位置を占めています。

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