紀元前432年

紀元前432年：ペロポネソス戦争と文化の進展

紀元前432年は、古代世界において幾つかの重要な出来事が発生した年として歴史に刻まれています。この年は、ペロポネソス戦争におけるアテナイとスパルタの対立が激化し、地中海世界を揺るがす出来事が発生した時代でした。

ギリシア：ペロポネソス戦争の激化

スパルタはペロポネソス同盟の会合を招集し、アテナイの和平違反を理由に、アテナイへの敵対姿勢を明確にしました。アテナイの提督ポルミオン率いる艦隊はコリンティアコス湾を封鎖し、ポティダイアへの攻城戦を継続しました。アテナイ軍は、ポティダイアを支援するマケドニア軍への攻撃を展開し、テルマを陥落させ、ピュドナを包囲しました。しかし、ピュドナの攻城戦中にコリントスの援軍がポティダイアに到着したため、アテナイ軍はポティダイアへと転進、そしてポティダイアの戦いでアテナイは勝利を収めました。この戦いは、ペロポネソス戦争における重要な転換点となりました。

イタリア：ギリシア植民都市の建設

イタリア南部では、ターレスとトリオイからの入植者たちによって、ヘラクレイアというギリシアの植民都市が建設されました。この植民都市の建設は、ギリシア文化がイタリア半島に広がる上で重要な役割を果たしました。ヘラクレイアは、その後、マグナ・グラエキアと呼ばれる地域の中心都市として繁栄することになります。

中国：曾侯乙墓の発見

中国では、戦国時代の楚の貴族、曾侯乙が埋葬され、その豪華な墓から、65個の編鐘を含む多くの副葬品が発掘されました。これらの編鐘は、5オクターヴの音域と2種類の音色を奏でることができ、当時の中国の高度な金属加工技術と音楽文化の高さを示す貴重な発見です。曾侯乙墓は、戦国時代の社会構造や文化を理解する上で重要な手がかりを提供しています。

天文学：メトンの19年周期

ギリシアの天文学者メトンは、太陽と月の相対的な周期を正確に計算し、19年のメトン周期を確立しました。この周期は、アテナイの暦に導入され、日付の計算の基礎となりました。彼は、エウクテモンとの共同作業で夏至の観測も行いました。メトンの業績は、後の天文学の発展に大きな影響を与えました。

建築：パルテノン神殿の彫刻

アテナイのアクロポリスにあるパルテノン神殿の彫刻群が、ペイディアスによって完成しました。これらの彫刻は、ギリシア彫刻の最高傑作の一つとして知られ、古代ギリシアの芸術と技術の高さを示しています。パルテノン神殿は、アテナイの威信と文化の高さを象徴する建築物となりました。

その他

この年には、シュラクサイの僭主ディオニュシオス1世が生まれたと推定されています。（没年は紀元前367年）

紀元前432年は、ペロポネソス戦争の激化、ギリシア植民都市の建設、中国の高度な技術、そして天文学や建築における進歩など、古代世界の様々な分野で重要な出来事が起きた年でした。これらの出来事は、後世の歴史や文化に大きな影響を与えました。

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