ポニー・ポインデクスター

ポニー・ポインデクスター（Pony Poindexter、1926年2月8日 - 1988年4月14日）は、アメリカ合衆国出身のジャズ・サクソフォーン奏者として、ジャズの歴史にその名を刻んでいます。彼の音楽人生はクラリネットの演奏からスタートしましたが、次第にアルト・サックスとテナー・サックスを主要な楽器とするようになり、さらに1960年代初頭にはソプラノ・サックスもレパートリーに加えるなど、柔軟な楽器選択と多様な音楽スタイルへの適応力を示しました。

彼の音楽的基礎は、著名な指導者シドニー・デヴィーンに師事したことに遡ります。第二次世界大戦後、彼はカリフォルニア州オークランドに新設されたキャンデル音楽院で専門的な音楽教育を受け、演奏家としての技術を磨きました。プロの道に進んだポインデクスターは、1947年から1950年にかけてビリー・エクスタイン率いるオーケストラで活躍し、その名を知られるようになります。この時期は、多くのジャズミュージシャンがビッグバンドで経験を積む重要な時代でした。1950年にはヴァーノン・アレイとのカルテットで演奏し、小編成でのインタープレイにも積極的に取り組みました。その後、1951年から1952年にはライオネル・ハンプトン楽団に、1952年にはスタン・ケントンのオーケストラに参加するなど、当時のジャズ界を牽引する複数のビッグバンドで重要な役割を果たしました。

ポインデクスターは、その才能と魅力的な人柄によって、多くのミュージシャンから尊敬を集めました。ジャズ界の巨匠であるカウント・ベイシー楽団のためにニール・ヘフティが作曲した「リトル・ポニー」という楽曲のタイトルは、ポインデクスターにちなんで名付けられたと伝えられています。これは、彼が同時代のジャズシーンにおいて、いかにユニークで影響力のある存在であったかを物語るエピソードと言えるでしょう。1950年代の終わりまで、彼は自己のリーダーバンドを率いる一方で、数多くの有名ミュージシャンの録音にも参加しました。特に、チャーリー・パーカー、ナット・キング・コール、T-ボーン・ウォーカー、ジミー・ウィザースプーンといった、ジャズ、ブルース、R&Bといったジャンルを超えた偉大なアーティストたちとの共演は、彼の多才さと幅広い音楽性を証明しています。

1960年代に入ると、ソプラノ・サックスを演奏に取り入れたことで、彼のサウンドはさらに多様性を増しました。1962年頃には、エピック・レコードの録音セッションにおいて、当時最も革新的と評されたサックス奏者エリック・ドルフィーや、テナー・サックスの巨星デクスター・ゴードンといった伝説的なミュージシャンたちと共に演奏を残しました。これらの録音は、当時のジャズの最先端を捉えた歴史的なセッションとして知られています。1963年、ポインデクスターは活動の舞台をヨーロッパに移し、パリに居を構えました。パリでは、シンガーのアニー・ロスとの共同リーダー作を制作するなど、ヨーロッパのジャズミュージシャンとの交流を通じて新たな音楽的刺激を得ました。パリでの滞在の後、彼はスペインに移住し、約8年間を過ごしました。さらにドイツのマンハイムでの滞在を経て、最終的に故郷であるアメリカへと帰国しました。

キャリアの晩年には、自身の豊富な経験とジャズ界での多くの出会いを綴った回顧録『The Pony Express. Memories of a Jazz Musician』を執筆し、1985年に出版しました。彼のディスコグラフィには、リーダー作として『Pony's Express』やブッカー・アーヴィンとの共演盤『Gumbo!』、アニー・ロスとのアルバム『Annie Ross & Pony Poindexter』などがあり、多様なスタイルでのリーダーシップを示しています。また、ジョン・ヘンドリックスやウェス・モンゴメリーといった著名なミュージシャンのアルバムにもサイドマンとして参加しており、その存在感を発揮しています。ポニー・ポインデクスターは、アルト、テナー、ソプラノといった異なるサックスを自在に操り、ビバップからブルース、ファンクに至るまで幅広いジャズのスタイルを探求したサックス奏者として、ジャズ史において重要な位置を占めています。1988年に亡くなりましたが、彼の残した録音は、その多才な才能とジャズへの貢献を今に伝えています。

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