ポリトイ・FX3

ポリトイ・FX3：ウィリアムズチームの礎を築いたマシン

フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズが1972年と1973年のF1世界選手権に投入したフォーミュラ1マシン、ポリトイ・FX3とその改良型であるイソ-マールボロ・FX3B。このマシンは、フランク・ウィリアムズが自身のチームで設計・製作した最初のオリジナルF1マシンとして、チームの歴史において重要な位置を占めています。

背景：カスタマーチームからの自立

元レーサーでレースカーディーラーでもあったフランク・ウィリアムズは、1968年に自身のチームを結成。フォーミュラ2で成功を収めた後、1969年からF1に参戦しました。当初はカスタマーチームとして、中古のマシンを購入してレースに参加していましたが、1971年、F1コンストラクターズ協会（FOCA）の設立により状況が変わります。FOCAへの参加には自チームのマシン製造が条件であり、これにより旅費などの経済的なメリットが得られる反面、カスタマーチームは参加できませんでした。FOCAへの加入を目指したウィリアムズは、自らマシンを設計・製造する道を選び、そのためにはスポンサーからの資金援助が不可欠でした。

そこで1971年秋、ウィリアムズはイタリアの玩具メーカー、ポリトイ社とスポンサー契約を締結。4万ポンドの資金提供を受け、その見返りとしてマシンに「ポリトイ・FX3」の名前が冠せられることとなりました。

開発と製造：予想以上の困難

レーシングカー設計の経験がなかったウィリアムズチームにとって、マシンの製造は容易ではありませんでした。当初の予定よりも6ヶ月以上の遅延が発生し、その原因としてウィリアムズ自身はデザイナーの不足と不規則な支払いなどを挙げています。レン・ベイリーによる設計、モーリス・ゴムによる製造監督の下、完成したFX3は、従来型サスペンションを採用したシンプルな構造で、アルミニウム製のモノコック、コスワースDFVエンジン、ヒューランドFG400 5速ギアボックスなどを搭載し、車重は580kgでした。

1972年の秋には元ブラバムのデザイナー、ロン・トーラナックがチームに加わり、マシンの改良に貢献。ウィリアムズは2台のFX3（FX3/1とFX3/2）を製造しましたが、どちらもチームに残され、外部販売はされませんでした。FX3/1は1972年春に完成、FX3/2は1972年から1973年にかけて製造されました。

レース戦績：困難なデビューと改良

1972年シーズン、チームは「チーム・ウィリアムズ・モチュール」として参戦。ドライバーにはアンリ・ペスカロロとカルロス・パーチェが起用されました。FX3/1はイギリスグランプリでデビューするも、ペスカロロがクラッシュし、大破してリタイア。修復は断念されました。その後、再建されたFX3/1はノンタイトル戦に出走しましたが、エンジントラブルでリタイアしました。

1973年シーズンはチーム名を「フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズ」に変更。ポリトイ社はスポンサーから撤退しましたが、イソ社とマールボロが新たなスポンサーとなり、マシン名は「イソ-マールボロ・FX3B」となりました。改良されたFX3/1（FX3B）は、開幕戦でエンジントラブル、次戦では完走するものの、その後も不調が続き、最高位はノンタイトル戦での4位にとどまりました。FX3/2も同様に結果を残せず、シーズン途中で新型マシンに切り替わりました。

まとめ：ウィリアムズチームの出発点

ポリトイ・FX3とその改良型は、F1での成功は限定的でしたが、フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズの独立性を確立し、将来の成功への重要な第一歩となりました。このマシンは、ウィリアムズチームがいかにして困難を乗り越え、独自の道を切り開こうとしたかを象徴する存在と言えるでしょう。 限られた予算と経験不足の中での挑戦は、後のウィリアムズの成功を支える土台となりました。彼らの努力と挑戦は、F1の歴史において重要な1ページを刻んでいます。 その後、ウィリアムズは数々の成功を収めることになりますが、その出発点となったポリトイ・FX3は、決して忘れてはならない歴史的遺産です。

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