ポリーナ・アスタホワ

ポリーナ・グリゴーリエヴナ・アスタホワ：伝説の体操選手

ポリーナ・グリゴーリエヴナ・アスタホワ（1936年10月30日 - 2005年8月5日）は、旧ソビエト連邦を代表する傑出した女子体操選手です。彼女はメルボルン（1956年）、ローマ（1960年）、東京（1964年）の3度のオリンピックに出場し、合計10個のメダルを獲得しました。その功績が認められ、2002年には国際体操殿堂入りを果たしています。

生い立ちと体操との出会い

ポリーナ・アスタホワは、1936年にウクライナ・ソビエト社会主義共和国（現在のウクライナ）のザポリージャで生まれました。幼少期に第二次世界大戦を経験し、戦火を避けて家族とともに各地を転々としました。セヴェロウラリスクに住んでいた頃、結核と診断されたことがきっかけで、温暖な気候を求めてドネツクへ移住します。

ドネツクで体育学校に通っていた13歳の時、彼女は初めてドネツク体操競技選手権を観戦し、その演技に強い感銘を受けました。これがきっかけとなり、シャフタール・ドネツクスポーツクラブで体操競技のトレーニングを始めることになります。彼女のコーチとなったのは、ウラジーミル・アレクサンドロヴィッチ・スミルノフでした。

「ロシアの白樺」

アスタホワは、その並外れた優美さから、欧米のメディアによって「ロシアの白樺」というニックネームで呼ばれました。1956年から1966年までの間、彼女は数多くの国際大会およびソビエト国内大会で、特に段違い平行棒において常にトップの座を維持しました。また、1955年から1968年までソビエト代表チームの一員として活躍しました。

オリンピックでの輝かしい実績

1954年のソビエト連邦選手権に初出場した後、アスタホワはソビエト代表に選ばれ、1956年のメルボルンオリンピックに出場しました。チーム最年少メンバーとして、団体総合での金メダル獲得と、手具体操団体での銅メダル獲得に大きく貢献しました。

1960年のローマオリンピックでは、団体総合と段違い平行棒で金メダル、ゆかで銀メダルを獲得しました。個人総合でも一時トップに立ちましたが、8つのルーティンの7つ目である平均台の演技で落下し、惜しくも金メダルを逃し、銅メダルに終わりました。この結果に彼女は深く落胆しましたが、翌1961年のヨーロッパ選手権ライプツィヒ大会で、段違い平行棒と平均台で金メダルを獲得し、見事に立ち直りました。

1964年の東京オリンピックでは、ソビエトチームの団体総合での金メダル獲得に貢献したほか、段違い平行棒で金メダル、ゆかで銀メダル、個人総合で銅メダルを獲得しました。

引退後

1968年に現役を引退した後、アスタホワはソビエト代表チームのコーチなどを務めました。1972年のミュンヘンオリンピックと1980年のモスクワオリンピックでは、ソビエト代表を団体総合金メダル獲得へと導きました。

晩年はキエフで過ごし、2005年8月5日に肺炎のため68歳で亡くなりました。

ポリーナ・グリゴーリエヴナ・アスタホワは、その優雅な演技と輝かしい実績で、体操競技界に大きな足跡を残しました。彼女は今もなお、世界中の体操選手たちにとって憧れの存在であり続けています。

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