ポルシェ・WSC95

ポルシェWSC95：栄光の軌跡と惜しまれる才能

1995年、世界的な自動車メーカー、ポルシェは、アメリカ合衆国のIMSA（国際モータースポーツ協会）が主催するレース、そして世界3大耐久レースの一つであるデイトナ24時間レース制覇を目指し、WSC95を開発しました。このマシンは、オープン2シーターのプロトタイプで、WSCクラスに参戦するために設計されました。

誕生秘話：TWRとポルシェの技術融合

WSC95の開発には、トム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）が深く関わっています。TWRは、ジャガー・XJR-14のシャーシをベースに、改良を加えたカーボンファイバー製のモノコックを製作しました。この軽量かつ高強度のシャシーに、ポルシェの信頼性の高い心臓部、962Cに搭載されていた935/83型3.0リットル水平対向6気筒ターボエンジンとトランスミッションが組み合わされました。2台のみ製造された、まさに希少なマシンと言えるでしょう。

デイトナ24時間レースへの夢、そして挫折

1995年、WSC95はIMSA開幕戦であるデイトナ24時間レースへの出場を予定していました。しかし、レース直前にIMSAがWSCクラスのターボ車のリストリクター径を大幅に変更するという決定を下しました。この変更によって、WSC95の出力は大きく低下し、ポルシェワークスはレースからの撤退を余儀なくされました。デイトナでの活躍は、残念ながら実現しませんでした。

さらに、同年開催されたル・マン24時間レースへの参戦も、前年に962Cをベースにしたダウアー・962LMが優勝したことで、ポルシェは批判を浴びることを危惧し、エントリーを見送るという苦渋の決断を下しました。

ヨースト・レーシングとの出会い、そしてル・マン制覇

1996年、ポルシェはGT1クラスに参戦するための新型マシン、911GT1の開発に注力しました。これに伴い、WSC95はヨースト・レーシングというチームに譲渡されました。ヨースト・レーシングはWSC95を駆り、ル・マン24時間レースに参戦。そして、1996年、1997年と2年連続で優勝を果たすという偉業を成し遂げました。

LMP98への進化と最後の挑戦

1998年には、WSC95は更なる進化を遂げます。911GT1用のM96/77型3.2リットル水平対向6気筒ターボエンジンを搭載し、LMP98と改名されました。この年、ポルシェはル・マン24時間レースでの勝利を確信し、ワークスチームとしてヨースト・レーシングを迎え入れ、2台のLMP98をエントリーしました。しかし、2台共に完走は叶わず、悔しい結果に終わりました。その後、ドナルド・パノスが主催した「プチ・ルマン（ロードアトランタ）」に参戦しましたが、タイヤのトラブルによりワークスノミネートのダンカ・フェラーリ333SPに敗れ、総合2位という成績でその歴史に幕を閉じました。

WSC95、そしてLMP98の活躍は、ポルシェの技術力の高さ、そしてヨースト・レーシングの高いドライビングスキルとチームワークの賜物でした。惜しまれながらもその歴史に幕を閉じたWSC95は、モータースポーツ史に燦然と輝く、名車の一つとして語り継がれていくことでしょう。

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