ポルトガル・エスクード

ポルトガル旧通貨エスクード：歴史と概要

エスクード(Escudo)は、ポルトガルで1911年から1999年まで使用されていた通貨です。ポルトガル語で「盾」を意味し、ISO 4217コードはPTE、補助単位は100分の1のセンターボでした。通貨記号は、ドル記号に似た縦線が2本の記号(S‖)を使用し、例えば25エスクードは「25S‖」と表記されました。

1999年1月1日、ポルトガルはユーロを導入し、エスクードは2002年2月28日に流通を停止しました。ユーロへの移行レートは、200エスクード48.2センターボ＝1ユーロでした。

エスクードの歴史

エスクードは、1910年10月5日の革命後、それまでのレアルに代わって1911年3月22日に導入されました。導入時の為替レートは、1エスクード＝1000レイス（レアルの複数形）、4エスクード50センターボ＝1英国ポンドと設定されました。

しかし、第一次世界大戦後のエスクードの下落により、1928年と1931年には英国ポンドに対する為替レートが再設定されました。また、1940年にはアメリカ合衆国ドルとの為替レートが設定され、その後も何度か変更されました。

インフレの影響で、補助単位であるセンターボの使用機会は徐々に減少し、1990年代には流通が完全に停止しました。

エスクードの植民地での使用

エスクードはポルトガル本土に加え、アゾレス諸島、マデイラ諸島、そしてかつてのポルトガル植民地であるアフリカ諸国でも使用されました。アンゴラ、カーボベルデ、モザンビーク、ポルトガル領ギニア、サントメ・プリンシペなどでは、ポルトガルで発行されたエスクードが流通し、それぞれの地域名が付いたエスクード（例：アンゴラ・エスクード）として使用されていました。これらの地域が独立した後も、カーボベルデでは現在もエスクードが通貨として使用されています。

一方、マカオではポルトガル植民地時代からパタカが使用され、東ティモールでは当初パタカ、後にエスクードが使用されました。また、ポルトガル領インドも併合される前はエスクードを使用していました。

エスクードの硬貨

エスクード導入後、様々な額面の硬貨が発行されました。初期には銀貨、その後は銅貨や白銅貨、アルミニウム青銅貨などが発行され、材質やデザインは時代とともに変化しました。1980年代後半には、1、5、10、20、50、100、200エスクードスの新しい硬貨が導入され、ユーロ導入まで流通しました。ユーロへの交換レートは、1エスクードが0.005ユーロから0.09976ユーロまで額面によって異なりました。硬貨の交換期限は2002年12月31日でした。

50センターボス硬貨は「コロア(coroa, 王冠)」と呼ばれ、2エスクード50センターボス硬貨は「シンココロアス(cinco coroas, 5つの王冠)」という別名もありました。また、旧通貨レアルの名残から、2エスクード50センターボス硬貨を「ドイスイキニェントス(dois e quinhentos, 2500)」と呼ぶこともありました。

エスクードの紙幣

紙幣は、造幣局とポルトガル銀行によって発行されました。初期には低額の紙幣が発行され、その後高額の紙幣も導入されました。1989年には10,000エスクードスの紙幣が発行されましたが、100エスクードスの紙幣は硬貨に置き換えられました。

紙幣には、ポルトガルの歴史上の人物や国王の肖像が描かれていました。最後のシリーズの紙幣には、大航海時代の探検家であるジョアン・デ・バーロス、ペドロ・アルヴァレス・カブラル、バルトロメウ・ディアス、ヴァスコ・ダ・ガマ、エンリケ航海王子らの肖像が描かれていました。

ユーロへの交換レートは、500エスクードスが2.49ユーロから49.88ユーロまで額面によって異なり、交換期限は2002年2月28日でした。

まとめ

エスクードは、ポルトガルの歴史と植民地支配を反映した通貨でした。ユーロへの移行は、ポルトガルの近代化と欧州統合を示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

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