ポータパック

ポータパックとは

ポータパックは、1967年に登場したバッテリー駆動の自給式アナログビデオテープ録画システムです。それまでのテレビカメラは大型で重量があり、専用車両での運搬とスタジオでの据え付けが必須でしたが、ポータパックは1人で持ち運び、操作できる画期的なものでした。これにより、スタジオ外での撮影が容易になり、プロだけでなくアマチュアも手軽にビデオ制作に取り組めるようになりました。

初期のポータパックは、白黒のコンポジットビデオカメラと、録画専用のヘリカルスキャン方式1/2インチVTRユニットで構成されていました。録画した映像を再生するには、別途CVシリーズのVTRが必要でした。その後、ソニーのビデオローバーを皮切りに、様々なメーカーが独自のポータパック技術を開発しました。

ポータパックは軽量であるものの、通常は2人1組で操作されました。1人がカメラを持ち、もう1人がVTRを操作するというスタイルが一般的でした。その後、EIAJ-1フォーマットを採用したAV-3400/AVC-3400が登場し、30分の録画と再生機能が搭載されました。さらに、U規格やBetacam SPなど、様々なフォーマットに対応したポータパックが発売され、特にBetacam SP用では、大型のLカセットを使用することで最大90分の録画が可能となりました。

ポータパックがもたらした影響

ポータパックの登場は、ビデオアート、ゲリラテレビジョン、アクティビズムの発展に大きな影響を与えました。TVTVやVideofreexといったビデオコレクティブは、ポータパックを活用して既存のテレビネットワークとは異なる視点からカウンターカルチャー運動を記録しました。また、Raindance Foundationのような団体は、ポータパックの可能性に触発され、新たなコミュニケーション形態を模索しました。

ポータパックは比較的手頃な価格で即時再生が可能であったため、資金力のある制作会社に頼らずとも、アーティストや研究者、社会評論家が自由に映像を制作し、配布できる手段を提供しました。

社会変革の触媒として

ポータパックは、それまでテレビ制作の手段を持たなかった世代に、映像制作の機会を与えました。安価で軽量、操作も簡単で信頼性が高く、実用的な白黒映像と許容範囲の音声が記録できました。テープも再利用可能で安価であり、ポータパックは映像と社会変革を結びつける様々な活動を促すきっかけとなりました。

ポータパックは、まるでアーティストのために発明されたかのように登場しました。当時のアート界では、純粋な形式主義が行き詰まり、作品制作自体が政治的に気まずいものになっており、何も作らないことが滑稽に感じられる時代でした。多くのアーティストがパフォーマンス作品を制作しながらも、発表の場がなかったり、記録の必要性を感じていた時代でもありました。

テレビが大きな壁よりも多くの情報を人々に伝えることが明らかになり、空間を定義するためには時間を取り入れる必要があると理解され始めた時代に、ポータパックが登場しました。

ポータパックを使用した主なアーティスト

アンディ・ウォーホル
ナム・ジュン・パイク（ローマ法王のニューヨーク訪問をタクシーの後部座席から撮影したのが最初という噂）
久保田成子
ブルース・ナウマン
ジョーン・ジョナス
ピーター・キャンパス
ウィリアム・エグルストン

参考文献

CCJ connector

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