ポール・ストッダート

ポール・ジェラルド・ストッダート

ポール・ジェラルド・ストッダート（Paul Gerard Stoddart、1955年5月26日生）は、オーストラリア出身の実業家であり、ミナルディF1チームの元オーナーとして知られています。彼は英国に定住しており、その活動は自動車業界と航空業界に広がっています。ストッダートの日本語表記としては「ポール・スタッダート」も用いられることがあります。

初期の経歴

ストッダートはビクトリア州メルボルンのコバーグで生まれ育ちました。26歳の1981年から彼は頻繁にイギリスを訪れ、自動車輸入・販売事業に参入します。地方GTカーのレースにも参加しながら、自動車販売業によって初期の富を築きました。彼のビジネスの転機は1989年、ロンドンでの航空機オークションで数百万ドルを投資し、BAC 1-11という旅客機の一式を落札したことでした。この経験が、後に航空機リース事業を立ち上げる非常に重要な土台となりました。

1991年にはブリティッシュ・エアウェイズのダンエアを買収し、24機のBAC 1-11を取得しました。この取引により、彼は整備部門も併せ持つ航空機販売会社を設立し、業績を上げていきました。

ストッダートはまた、オーストラリアにおけるギャンブル特区であるタスマニアに目をつけ、VIP専用チャーター便「ヨーロピアン航空」を運営し、成功を収めました。

F1への関わり

ストッダートは1995年に発足したF1の歴史的なレース「ボスGP」において、ティレルやミナルディ、ベネトン、ブラバムなど複数のF1カーを投入しました。彼は1997年から1998年にかけて、ティレル・022をドライブするナイジェル・グリーンソールを起用し、ボスGPで優勝を果たしました。そして、1999年には自ら設計したティレル・022とティレル・025でレースを行い、ブランズ・ハッチでの初レースで3位に入賞しました。このシリーズは2000年まで続き、その後ユーロ・ボス・シリーズとして展開されました。

1997年、ティレルチームはストッダートのヨーロピアン航空を技術パートナーに選び、風洞実験施設を建設する計画を立てましたが、同年11月に共同出資者グループにより2600万ドルで買収されました。

その後、1998年にはブリティッシュ・アメリカン・レーシングによるティレル資産の買収が行われ、ストッダートは不要になった7.5トンのスペアパーツを手に入れると共に、ティレル自身のF1チームを買収し、1999年にツーシーターのレースカーへと改造するプロジェクトに着手しました。この時、彼の工場には40名のスタッフが関わり、2000年には製造コストの見積もりも行いました。

ストッダートはまた、2001年にミナルディの共同オーナーのガブリエーレ・ルミから、チームの株式を引き受ける形でミナルディの運営権を取得しました。

ミナルディ救済

ストッダートがミナルディを買い取った当初、チームは財政的な危機に見舞われていました。周囲からは彼の買収に対して懐疑的な声も上がったものの、ストッダートはこのチームの運営を引き受ける勇気を見せました。「万年最下位」「万年金欠」との評判を覆そうと、彼は苦境を乗り越えようと努力しました。

あと、ストッダートはチームをファエンツァに残すことを決定し、その後もスポンサーを模索しましたが、スポンサーシップ不足に悩まされ続けました。2002年末にはオランダの企業ウィラックスを新たなタイトルスポンサーとして迎え入れましたが、2004年のイギリスGPでの出来事により再び財政危機に直面しました。

ストッダートは最終的に2005年9月にミナルディチームをレッドブルに売却する決断を下し、これによりF1から一時撤退することとなります。彼のミナルディに対する思いは深く、彼がチームのために注いだ努力は、F1界でも忘れられない存在として残ります。

チーム売却後の動向

ミナルディを売却した後、ストッダートは新たにVIPチャーター便会社「Ozジェット」をオーストラリアで設立しました。この新会社の設立には、ミナルディ売却の際の資金が利用されたとされています。また、F1からの撤退後も「ヨーロピアン・ミナルディ」の2シーターF1カーを使ったイベントを開催し、更に2017年時点ではF1へのツアーサービス「F1 Experiences」を運営するなど、多方面で活躍を続けています。

ポール・ストッダートは、ミナルディのオーナーとしての活動を通じて、F1における重要な存在となり、その後もビジネスを通じて自動車と航空の両方で影響を与え続けています。

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