ポール・ニッツェ

ポール・ヘンリー・ニッツェの生涯と業績

ポール・ヘンリー・ニッツェ（Paul Henry Nitze）は、1907年1月16日にマサチューセッツ州アマーストで誕生し、2004年10月19日にワシントンD.C.で逝去したアメリカの政治家、外交官、実業家です。彼は冷戦期においてアメリカの対外政策、特に核戦略と軍備管理において重要な役割を果たしました。ニッツェの名前は、日本語ではニッツまたはニッチェと表記されることもあります。

学歴と初期のキャリア

ニッツェは1928年にハーバード大学を卒業した後、ディロン・リード商会に入り、投資銀行家としてのキャリアをスタートさせました。1937年には同社の副社長に就任しましたが、その翌年には独立を果たしました。しかしこの際、過労により一時的に能力を失うこととなり、再びディロン・リード商会の副社長に復帰しました。1940年、彼はルーズベルト大統領の特別補佐官に就任し、フォレスタル社長のもとで行政府に出入りするようになります。

第二次世界大戦の際には、ニッツェは太平洋方面アメリカ戦略爆撃調査団の副団長を務め、原爆投下後の広島と長崎を訪れるという重要な任務を担いました。これらの経験が、後の彼の思想や行動に大きな影響を与えました。

国家安全保障会議文書68号（NSC-68）

1950年、ニッツェは国務省政策企画本部長に就任しました。彼はソ連の脅威を重大視し、また核兵器の出現が戦争の特性を変えなかったと考えていました。この彼の考え方は、後に国家安全保障会議文書68号（NSC-68）の起草に反映され、アメリカの冷戦政策の重要な基盤となりました。この文書でニッツェは、対ソ連戦略における戦力の増強と民間防衛んの重要性を強調しました。

民間と政府での活動

アイゼンハワー政権下では、ニッツェは外務教育財団の会長として活動し、またジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院（SAIS）の共同創設者として大学教育に尽力しました。しかし、1957年にソ連がスプートニク1号を打ち上げたことを受けて、彼は安全保障政策検討委員会に参加し、国の防衛力強化を訴える調査報告を作成しました。

その後、ニッツェは国防次官補、海軍長官、国防副長官としての要職を歴任し、戦略兵器制限交渉（SALT-I）にも携わりました。1970年代後半には現在の危機に関する委員会に参加し、対ソデタント政策に対して批判的な立場を取るようになりました。

軍備管理と最晩年

1981年から1984年にかけて、ニッツェは中距離核戦力全廃条約交渉のアメリカ代表団の代表を務め、その後も大統領および国務長官特別顧問（軍備管理担当）として活動しました。彼の功績は1985年に大統領自由勲章を受章することで認められました。

97歳で亡くなるまで、ニッツェはアメリカの核戦略の設計に多大な影響を与え続けました。彼の著書『From Hiroshima to Glasnost: At the Center of Decision』は、彼の思考過程や外交政策への貢献を深く掘り下げた作品として評価されています。彼の業績は、冷戦時代の国際関係において今なお重要な位置を占めています。

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