ポール・フォーシェ

ポール・ロベール・マルセル・フォーシェ（Paul Robert Marcel Fauchet）は、1881年6月27日に生まれ、1937年11月12日にその生涯を閉じたフランスの作曲家、オルガニスト、そして教育者です。

パリに生を受けたフォーシェは、フランス音楽界の中心であるパリ音楽院で学びました。ここでは、名高いオルガニストであり作曲家のアレクサンドル・ギルマン、そして作曲家・指揮者として知られるポール・ヴィダルに師事し、対位法やフーガ、作曲法などを深く習得しました。学業優秀であった彼は、1904年には対位法とフーガの分野で首席（プルミエ・プリ）を獲得して音楽院を卒業しています。

音楽院卒業後、フォーシェは指導者としての道を歩み始めます。まず、師の一人であるポール・ヴィダルの助手として経験を積み、後に和声科のクラスを担当するようになりました。彼の教えを受けた門下生からは、日本を代表する作曲理論家の一人である池内友次郎をはじめ、ジャック・ド・ラ・プレル、マルセル・ランドスキ、レイモン・ルシュール、ピエール・デュポン、ルシアン・カイリエなど、後に各分野で活躍する多くの音楽家が輩出されており、教育者としても重要な足跡を残しました。

オルガニストとしても活動の場を持ちました。1910年には、パリ市内のサン・ピエール・ド・シャイヨ大聖堂の楽長に就任し、教会の典礼音楽を司りました。また、ヴェルサイユにあるノートルダム教会や、第一次世界大戦中にはオーブ県バール＝シュル＝オーブでもオルガン奏者を務めるなど、各地の教会でその演奏技術を披露しました。

作曲家としての作品には、ノエル（クリスマスの歌）、モテット、ミサ曲といった宗教音楽が数多くありますが、これらは今日では顧みられる機会は少ないのが現状です。しかし、彼の作品の中で特に知られているのは、吹奏楽のために書かれた一曲、『吹奏楽のための交響曲（Symphonie pour Musique d'Harmonie）』です。

この交響曲は1926年に発表され、フランスの著名な吹奏楽団であるギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団によって初演されたと推定されています。今日でも、世界中の吹奏楽団によって演奏機会のある重要なレパートリーの一つとなっています。特にアメリカ合衆国においては、ジェイムズ・ロバート・ジレットとフランク・キャンベル＝ワトソンによってアメリカ式の吹奏楽編成用に編曲・出版された際、『交響曲 変ロ長調（Symphony in B Flat）』というタイトルが付され、この名称でも広く知られています。

また、フォーシェは著作も残しており、特に和声法の学習者のための課題集『Cinquante Leçons d'Harmonie』や『Quarente Leçons d'Harmonie』は、音楽教育の現場で利用されました。これらの課題集は、日本国内でも多くの音楽教育機関や和声の学習者に活用されており、フォーシェの音楽理論教育への貢献は日本にも及んでいます。

このように、ポール・フォーシェは作曲家、オルガニスト、そして優れた教育者として、フランス音楽界に貢献した人物であり、特に吹奏楽の分野に残した作品は、今日でも多くの演奏家や聴衆に親しまれています。

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