池内友次郎

生涯

池内友次郎は、1906年（明治39年）に俳人・高浜虚子の次男として東京に生まれました。幼少期を鎌倉で過ごし、慶應義塾大学予科に進学しますが、西洋音楽の学習を深めるため中退。1927年、フランスに渡りパリ音楽院に入学し、作曲技法を学びました。

1937年に帰国後は、作曲活動の傍ら、教育者として活動を始めます。日本大学芸術科や東京芸術大学で教鞭をとり、後進の指導に力を注ぎました。東京芸術大学では音楽学部長も務めるなど、日本の音楽教育に大きな影響を与えました。また、相愛女子大学音楽学部でも教鞭を執りました。

1962年にはレジオンドヌール勲章を受章、1977年には勲三等旭日中綬章を受章、1986年には文化功労者となるなど、その功績は高く評価されています。1991年に脳内出血のため逝去しました。

音楽家としての活動

池内は、日本人として初めてパリ音楽院に入学し、フランス流の作曲技法を日本に持ち帰りました。教育者としては、戦後日本の作曲・音楽教育水準の底上げに大きく貢献し、東京音楽学校設立以来のドイツ偏重だった日本の西洋音楽教育に、フランスの様式を取り入れるきっかけを作りました。多くの翻訳書や著書を執筆し、門下からは多くの著名な作曲家が輩出しました。

創作活動においては、ソナチネや弦楽四重奏曲など少数の作品を残しましたが、1950年代後半以降は創作活動をほぼ停止し、弟子の育成に専念しました。

俳人としての活動

俳人としては、父・高浜虚子の影響で幼い頃から俳句を始め、虚子の主宰する俳句文芸誌『ホトトギス』にも参加しました。句集には『調布まで』や『池内友次郎全句集』などがあります。音楽家としての才能だけでなく、俳人としても才能を発揮しました。

家族

最初の妻・芳枝との間に3人の子をもうけました。芳枝の死後、ピアニストの遠藤郁子と再婚しましたが、後に離婚しました。次女の池内睦子はヴァイオリニストで、その娘のクリスティーナ・レイコ・クーパーはチェリストとして活躍しています。

主な作品

池内は、管弦楽曲、室内楽曲、声楽曲、映画・放送音楽、校歌など幅広いジャンルの作品を手掛けました。

管弦楽曲:
短章組曲 op.2（1934年以前）
馬子歌（1937年）
交響的二楽章（1951年）
室内楽曲、器楽曲:
日本古謡によるバラード op.8（1934年以前初稿、1936年改訂）
絃四重奏曲 op.6（1934年以前）
ピアノのためのイントロダクションとアレグロ op.7（1934年以前）
Divertissement Fugue op.10-2 (1936)
八重奏曲 (1938年)
絃四重奏曲 - 前奏曲と追走曲（1946年）
ピアノのためのソナチネ（1954年）
ヴァイオリンのためのソナチネ（1956年）
チェロのためのソナチネ（1957年）
礼奏（ピアノ連弾、1958年）
声楽曲:
あまりりす op.3（1929年）
こすもす op.9（1929年）
月見草 op.1（1931年）
櫻 op.5（1933年）
暁の郎坊（1937年）
少年の夢多し（1938年以前）
日本詞華集（1938年以前）
紅梅 op.21（1939年以前）
農民の歌（1939年）
半壁山奪取の日（1939年頃）
熊野 - ソプラノと管弦楽のための3つの小品（1942年）
南十字星（1942年）
ソプラノのためのソナチネ（1958年）
戀の重荷 (1974年）
映画・放送音楽:
暖流（1939年）
鉄輪（1940年）
隣組記（1942年）
激流（1944年）
物語「愛子」（1947年）
校歌:
愛知県立半田工科高等学校校歌
我孫子町立布佐小学校校歌
石巻市立石巻中学校校歌
大阪府立清水谷高等学校校歌
港区立青南小学校校歌
目黒区立東山中学校校歌
北鎌倉女子学園 校歌（1954年）など多数

著書

池内は、音楽理論書や句集など、多数の著書を執筆しました。

句集:
結婚まで（1940年）
調布まで（1947年）
池内友次郎全句集（1978年）
米寿光来（1987年）
音楽理論書:
対位法――理論及実習（1941年）
対位法（1950年）
楽典（1951年）- 外崎幹二との共著
聴音練習書（1951年）- 外崎幹二との共著
作曲法講義（1959年 - 1961年）
和音外音（1965年）
二声対位法（1965年）
和声――理論と実習（1964年 - 1972年）- 共著
和音構成音（1966年 - 1981年）
三声 - 八声対位法（1975年）
学習追走曲（1977年）
新版二声対位法（2024年）
新版三声 - 八声対位法（2024年）
学習フーガ（2024年）
訳書:
近代音楽理論選書（全10巻） - ダンディやビュッセルなど西洋音楽の巨匠の著書を翻訳。
その他:
父・高浜虚子 わが半生記（1989年）

門下

池内の門下からは、多くの著名な作曲家が輩出しました。主な門下生として、箕作秋吉、小倉朗、尹伊桑、島岡譲、貴島清彦、乾春男、別宮貞雄、宍戸睦郎、石井歓、石井眞木、松村禎三、黛敏郎、諸井誠、池野成、永冨正之、湯山昭、篠原眞、端山貢明、山本直純、間宮芳生、林光、矢代秋雄、三善晃、野田暉行、廣瀬量平、越部信義、高橋裕、池辺晋一郎、西村朗、青島広志などが挙げられます。

まとめ

池内友次郎は、作曲家、教育者、俳人として多岐にわたり活躍し、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。特に、フランス音楽の様式を日本に導入し、多くの優れた音楽家を育成した功績は非常に大きいと言えるでしょう。

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