ポーン・キングピッチ

ポーン・キングピッチ（Pone Kingpetch）は、1935年2月12日にタイ王国のプラチュワップキーリーカン県フワヒン郡で生を受けた、同国を代表する元プロボクサーです。

彼のキャリアは1954年5月1日に始まり、プロの世界に足を踏み入れました。そして1960年4月16日、バンコクのルンピニー・スタジアムで行われたタイトルマッチにおいて、当時のフライ級世界チャンピオンであったアルゼンチンの強豪パスカル・ペレスから勝利を収め、見事世界王座を獲得しました。この快挙は、タイ国民にとって初のプロボクシング世界チャンピオン誕生という歴史的な瞬間であり、ポーン・キングピッチの名は瞬く間に国内に広まりました。

王座獲得後、彼は幾度かの防衛に成功しますが、1962年10月10日には日本の蔵前国技館で日本のファイティング原田と対戦し、11ラウンドでのKO負けを喫し王座を明け渡しました。しかし、ポーン・キングピッチの真骨頂はここから発揮されます。失った王座を取り戻すべく、彼は翌1963年1月12日、地元タイでのリターンマッチで再びファイティング原田と拳を交え、見事勝利して世界チャンピオンの座に返り咲きました。

しかし、王座を巡る戦いは続きました。同年9月18日、今度は日本の東京体育館で日本の海老原博幸と対戦します。この試合は衝撃的な展開となり、ポーン・キングピッチは初回にKO負けを喫し、再び世界王座から陥落してしまいます。誰もが彼の時代は終わったと考えかけた時、ポーン・キングピッチは再び立ち上がります。1964年1月23日、タイのリングで海老原博幸との三度目の対戦が実現。激戦の末、ポーン・キングピッチは判定勝ちを収め、自身二度目の王座奪還を果たしました。この時獲得したのは、当時の世界ボクシング協会（WBA）と世界ボクシング評議会（WBC）両団体のフライ級王座でした。

複数回の王座獲得と陥落という波乱に満ちたキャリアを歩んだポーン・キングピッチでしたが、1965年4月23日、イタリアのローマで行われたサルバドーレ・ブルーニとの防衛戦で、0-3の判定で敗れ、両方の世界王座を失いました。この試合の後、彼はさらに2試合を行い、現役生活にピリオットを打ちました。

引退後は故郷で静かに過ごしたと伝えられています。そして1982年3月31日、47歳でその生涯を閉じました。タイ国民に希望と感動を与え、世界にその名を轟かせたポーン・キングピッチは、今もなおタイボクシング界の偉大なパイオニアとして記憶されています。

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