ギブソン・フライングV

フライングV：ロック史に名を刻む異形のギター

ギブソン社製のエレクトリックギター、フライングV（Flying V）は、その斬新なデザインと個性的なサウンドで知られる名器です。B.C.リッチ社のモッキンバードと並び、変形ギターの先駆けとして、ロックギターの歴史に大きな影響を与えました。

1958年、ギブソン社はエクスプローラーと共にフライングVを発表しました。しかし、発売当初は革新的なデザインが市場に受け入れられず、翌年には生産中止となってしまいます。わずか2年間の生産期間で製造された本数は、わずか98本という希少性も、後の伝説性を高める要因となりました。

しかし、フライングVはその後、数々の伝説的ギタリスト達によって演奏され、再評価されることになります。1960年代には、アルバート・キング、ジミ・ヘンドリックス、レズリー・ウエストといったブルース、ロックの巨匠達がフライングVを手にし、その独特のサウンドを作品に刻み込みました。キース・リチャーズ、ロニー・ウッド、デイヴ・デイヴィスといった著名なミュージシャンもフライングVを愛用しました。

1970年代以降も、フライングVの人気は衰えることなく、アンディ・パウエル、ポール・スタンレー、マイケル・シェンカーといった、異なる音楽性を持つ多くのギタリストがフライングVを選びました。コピーモデルも登場し、フライングVはますます広く認知されるようになりました。1980年代にはギブソン社が1958年モデルの復刻版を発売。エクスプローラー、モダーンと共に再び市場に登場しました。

1990年代以降も、フライングVは多くのミュージシャンに愛され続けました。レニー・クラヴィッツをはじめ、日本でもレイジーの高崎晃、THE ALFEE|THE_ALFEEの高見沢俊彦、UNICORNの奥田民生と阿部義晴、ウルフルズのトータス松本、小山田圭吾、布袋寅泰、ART-SCHOOLの木下理樹、スピッツの草野マサムネ、L'Arc〜en〜Cielのken、BOOM BOOM SATELLITESの川島道行、THE YELLOW MONKEYの菊地英昭、元くるりの大村達身、筋肉少女帯やX.Y.Z.→Aの橘高文彦、B'zの松本孝弘、GLAYのHISASHI、マカロニえんぴつの田辺由明など、数多くの著名なギタリストがフライングVを使用し、そのサウンドとルックスを自身の音楽表現に活かしています。IN-HIに至っては、ツインギターとベースの全てにフライングVを使用するほどです。

そのV字型のボディは、座って演奏する際には取り回しにくいと評されることもありますが、多くのプレイヤーを魅了する独自のトーンを生み出しています。50年代のオリジナルモデルとその復刻版に使用されたコリーナ材、その他のモデルに使用されているマホガニー材は、甘く太い独特のサウンドを生み出し、ブルースからヘヴィメタルまで幅広いジャンルで活躍できる楽器として支持されています。また、一部のモデルにはすべり止めが装着され、座奏時の安定性が向上しています。カイ・ハンセンのように「Vシェイプでないとしっくり来ない」と語るプレイヤーも存在するなど、その独特のフォルムとサウンドは多くのギタリストを虜にしています。

フライングVは、その奇抜なデザインと、唯一無二のサウンドで、ロックギターの歴史に燦然と輝く、名実ともに伝説的なギターと言えるでしょう。

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