マイトリーパーラ・シリセーナ

マイトリーパーラ・シリセーナ：スリランカ第7代大統領

マイトリーパーラ・シリセーナ（Maithripala Sirisena、1951年9月3日 - ）は、スリランカの政治家であり、2015年から2019年まで第7代大統領を務めました。彼の政治家としての道のりは、スリランカの政治 landscape において重要な転換点となりました。

生い立ちと初期の政治活動

シリセーナは、スリランカ北中部州の出身で、同州から初めて選出された大統領です。元々はスリランカ共産党の活動家であり、農学者でもありました。政治エリート層の出身ではないという点も、歴代の大統領とは異なる特徴でした。

1989年に国会議員に初当選し、1994年以降は様々な大臣を歴任しました。長年にわたり、スリランカ自由党 (SLFP) の幹事長として政権を支える立場にありましたが、2015年の大統領選で野党統一候補として出馬し、大きな転換期を迎えます。

2015年大統領選と勝利

2015年の大統領選において、シリセーナの勝利は多くの人にとって予想外の結果でした。事前の予測では、3選を目指す当時の大統領マヒンダ・ラージャパクサの優勢が伝えられていました。シリセーナの勝利は、多数派シンハラ人の中でも農村などの地方の有権者や、ラージャパクサ政権によって疎外されていた少数派のタミル人やイスラム教徒の支持によるものと分析されています。この勝利は、シリセーナ自身への支持というよりも、ラージャパクサ政権に対する不満の表れという側面が強かったと言えるでしょう。

大統領としての改革と課題

大統領就任後、シリセーナは「100-day reform program」と呼ばれる改革案を掲げ、前政権で強まった大統領権限の見直し、汚職問題や内戦末期の戦争犯罪の調査を進めることを目指しました。首相には、統一国民党 (UNP) の党首であるラニル・ウィクラマシンハを任命し、挙国一致体制を築こうとしました。

2015年8月には議会選挙も実施され、シリセーナを支持するUNPが勝利し、第1党となりました。これにより、大統領就任以来進めてきた政策が一定の評価を受けた形となりました。選挙後、UNPとSLFPによる大連立政権が結成されました。

しかし、2016年以降、シリセーナとウィクラマシンハ、UNPとSLFPの対立が次第に顕著になり、SLFP内部もシリセーナ派とラージャパクサ派が対立するなど、政治的混乱が続きました。汚職や戦争犯罪の調査も進まず、経済が悪化したこともあり、国民の不満が高まりました。2018年2月の地方選挙では、ラージャパクサが主導するスリランカ人民戦線 (SLPP) に過半数を奪われる大敗を喫しました。

2018年の政変と失墜

2018年10月26日、シリセーナは突如ウィクラマシンハを首相から解任し、後任に前大統領のマヒンダ・ラージャパクサを任命するという強硬手段に出ました。しかし、この行動は憲法違反であるとの批判を浴び、ウィクラマシンハ側も解任を拒否し、徹底抗戦の構えを見せました。結果として、シリセーナとラージャパクサは国会で不信任決議を可決され、最高裁もシリセーナの議会解散とウィクラマシンハ解任を違憲と判断しました。最終的に、ラージャパクサは首相を辞任し、ウィクラマシンハが再び首相に任命されました。

この政変により、シリセーナの政治的評価は大きく失墜しました。

退陣とその後

2018年の政変以降、シリセーナの評価は急落し、ウィクラマシンハとの関係も改善しませんでした。2019年4月に発生したスリランカ連続爆破テロ事件では、事前に警告を受けていたにもかかわらず、政治的対立により対策が行われなかったとして、厳しい批判を受けました。こうした状況の中、シリセーナは2期目となる同年11月の大統領選には出馬せず、退陣しました。次期大統領には、マヒンダ・ラージャパクサの弟であるゴーターバヤ・ラージャパクサが当選しました。

政策と外交

シリセーナは大統領として、前任大統領の親中政策を修正し、「全方位外交」を掲げました。しかし、中国にハンバントタ港を99年間貸与する政策に否定的な閣僚を解任するなど、難しい舵取りを迫られました。

マイトリーパーラ・シリセーナは、スリランカの政治史において、変化と混乱の時代を象徴する人物として記憶されるでしょう。

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