ラニル・ウィクラマシンハ

ラニル・ウィクラマシンハ：スリランカ政治の重鎮

ラニル・ウィクラマシンハ（Ranil Wickremesinghe）は、1949年3月24日生まれのスリランカの政治家です。彼は、同国の大統領を1期、首相を4期務め、スリランカの政治において重要な役割を果たしてきました。統一国民党 (UNP) の党首としても長きにわたり、そのリーダーシップを発揮してきました。

生い立ちと学歴

ウィクラマシンハは、弁護士エスモンド・ウィクラマシンハとナリニ・ウィクラマシンハの次男としてコロンボで生まれました。名門ロイヤル・カレッジ・コロンボで学び、アヌラ・バンダラナイケやディネーシュ・グナワルダナといった、後に政治家となる人物たちと机を並べました。その後、セイロン大学コロンボ・キャンパス（現コロンボ大学）に進学し、法学を修めました。大学卒業後、司法試験に合格し、弁護士としての道を歩み始めました。

政治家としてのキャリア

1977年の議会総選挙で初当選を果たし、政界入りしました。1993年5月、ラナシンハ・プレマダーサ大統領の暗殺後、首相だったディンギリ・バンダー・ウィジェートゥンガが大統領に昇格したことを受け、ウィクラマシンハは初めて首相に就任しました。

2001年の総選挙では、自身の率いるUNPが勝利し、チャンドリカ・クマーラトゥンガ大統領の下で2期目の首相を務めました。2005年には大統領選挙に出馬しましたが、元首相のマヒンダ・ラージャパクサに僅差で敗れました。

3期目の首相と政治危機

2015年の大統領選挙では、与党スリランカ自由党 (SLFP) を離脱したマイトリーパーラ・シリセーナを野党統一候補として支持し、シリセーナの当選により3期目の首相に就任しました。しかし、UNP/SLFPの大連立政権下では、大統領と首相、そして政党間の対立が絶えず、2018年4月には不信任決議案が提出される事態となりました（否決）。

さらに同年10月、大統領によって突如首相を解任され、後任に前大統領のマヒンダ・ラージャパクサが任命されるという政治危機が発生しました。ウィクラマシンハはこの解任を違憲であるとして争い、12月には首相に再任されました。

2019年11月の大統領選挙では、シリセーナが出馬を見送ったため、UNP副党首のサジット・プレマダーサを擁立しましたが、マヒンダの弟であるゴーターバヤ・ラージャパクサに敗北。同年11月21日に首相を退任しました。

4期目の首相、そして大統領へ

マヒンダ・ラージャパクサが首相に就任しましたが、アジア最速のインフレが進むなど、経済失政に対する批判が高まり、2022年5月9日に首相を辞任。その後継としてウィクラマシンハが指名され、5月12日に4度目の首相に就任しました。彼は財務大臣も兼任し、国際通貨基金 (IMF) との救済措置をめぐる協議を主導しました。

しかし、経済状況は好転せず、6月には議会でスリランカ経済が完全に崩壊したと発言、7月にはスリランカが破産した国であると発言しました。7月9日には、ゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領の退陣を求めるデモ隊が大統領公邸に侵入し占拠、ウィクラマシンハ自身も自宅に火を放たれるという事態が発生しました。事態を受け、挙国一致内閣樹立を理由に首相を辞任、ラージャパクサ大統領も辞任しました。その後、大統領代行を経て、2022年7月20日の大統領選挙で勝利し、大統領に就任しました。

大統領として

ウィクラマシンハ大統領は、就任後、財政赤字からの脱却を目指し、緊縮財政や増税政策を実施しました。また、[国際通貨基金]から30億ドルの支援を取り付けることに成功しました。しかし、これらの政策は国民に負担を強いることになり、不満も広がりました。

2024年の大統領選挙では再選を目指しましたが、人民解放戦線党首のアヌラ・クマラ・ディサナヤカや統一人民戦線党首のサジット・プレマダーサに及ばず、3位で敗退しました。これにより、彼の任期は終了しました。

ラニル・ウィクラマシンハは、スリランカの政治史において、首相と大統領を歴任し、激動の時代を駆け抜けた重要な人物です。彼の政治手腕は、評価が分かれるものの、スリランカの政治経済に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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