マクシマ・フィルム

マクシマ・フィルム（Maxima Film Compagnia Cinematografica）

イタリアにかつて存在した映画製作会社、マクシマ・フィルムは、1957年から1962年までのわずか5年間という短い活動期間ながら、イタリア映画界の重要な一時代を彩りました。

短命ながら独自のスタイルを追求

マクシマ・フィルムの活動期間は限られていましたが、その最大の特徴は、手掛けた全ての作品が他の会社との共同製作であった点です。自社で映画の配給網を持たなかったため、製作した作品を公開するためには常に配給能力を持つパートナーとの連携が不可欠でした。この協力体制は、イタリア国内の著名なプロデューサーであるカルロ・ポンティやディノ・デ・ラウレンティス、さらにはスペインやフランスの映画会社に及び、国際的な視野を持つ製作が行われました。

特に、コメディを得意としたステーノ監督とは密接な関係にあり、『Susanna tutta panna』、『トト、月へ行く』、『Femmine tre volte』、『I tartassati』、『吸血鬼受難の時代』など、彼の監督作品を多数手掛けました。これは、特定の監督との信頼関係を築きながら効率的に製作を進めるという、共同製作ならではの強みと言えるでしょう。

イタリア映画界の未来を担う人材を輩出

マクシマ・フィルムは、後にイタリア映画界で名を馳せる多くの才能が経験を積んだ場としても知られています。製作主任という立場で現場を動かしていたのは、マリオ・チェッキ・ゴーリ、ピオ・アンジェレッティ、クレメンテ・フラカッシ、ライモンド・カステッリといった面々です。彼らはここでプロデューサーとしての基礎や実践的なスキルを磨きました。

中でもマリオ・チェッキ・ゴーリは、マクシマ・フィルムでその才覚を認められてプロデューサーに昇進し、早くも1960年には独立して自身の製作・配給会社「フェア・フィルム」を立ち上げました。これは、マクシマ・フィルムでの経験が、彼のその後の輝かしいキャリアにおける決定的な出発点となったことを示しています。また、製作主任の一人であったライモンド・カステッリは、同社がスター女優として育て上げたシルヴァ・コシナと公私にわたる関係を築き、後に結婚しています。

さらに、ゴシック・ホラーなどで国際的な評価を得るルチオ・フルチも、助監督としてこの会社でキャリアの第一歩を踏み出しました。『Susanna tutta panna』や『Femmine tre volte』といった作品で、映画製作の現場を肌で感じ、技術を習得したのです。

多様なジャンルと著名な出演者

活動期間は短かったものの、マクシマ・フィルムはコメディ、ドラマ、サスペンスなど、幅広いジャンルの作品を製作しました。出演者も豪華で、アルベルト・ソルディ、トト、シルヴァ・コシナ、ニーノ・マンフレディ、ヴィットリオ・ガスマン、デヴィッド・ニーヴンなど、イタリア国内外のスター俳優が出演しています。

代表的な作品としては、アルベルト・ソルディ主演の『夏物語』や『ガストーネ』（この作品は衣裳デザインでナストロ・ダルジェント賞を受賞）、トトとシルヴァ・コシナが出演した『トト、月へ行く』、ヴィットリオ・ガスマン主演でベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出されたディーノ・リージ監督の『Il Mattatore』などがあります。国際共同製作としては、デヴィッド・ニーヴンらが出演したサスペンス『La Città prigioniera』なども挙げられます。

これらの作品は、ガリュス・フィルム、モンテルーチェ・フィルム、ルックス・フィルム、シャンゼリゼ・プロデュクシオン、CEIインコム、ヴァラエティ・フィルム、SGC、ガラテア・フィルムといった、多岐にわたる共同製作パートナーとの協力があってこそ実現しました。

結び

マクシマ・フィルムは、わずか5年間の歴史に幕を閉じましたが、その期間に共同製作という形態を駆使して多様な映画を生み出し、そして何よりも、マリオ・チェッキ・ゴーリ、ルチオ・フルチといった、後にイタリア映画界を牽引する重要な人材を輩出しました。活動期間の短さにもかかわらず、イタリア映画史において見過ごすことのできない存在であったと言えるでしょう。

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