マクドネル・ダグラス DC-10

DC-10とは

DC-10は、マクドネル・ダグラス社がアメリカン航空の要求に応じて開発した3発式のワイドボディジェット旅客機です。主に中距離路線に対応したこの機体は、約300席を有し、エンジンは左右の主翼下に2基、垂直尾翼の基部に1基が搭載されています。1966年に開発が始まり、1970年に初飛行、1971年8月から運航を開始しました。1988年まで生産が続けられ、総生産台数は446機に達しました。

機体の特徴

DC-10の特徴の一つは中央エンジンの配置です。同時期に開発されたロッキードL-1011トライスターとは異なり、DC-10のエンジンは胴体上部の垂直尾翼内に直線的に配置されています。この配置により、エンジンの吸気ダクトが縦型に設計され、尾翼の構造材も特別な設計を要しました。主翼は35度の後退角を持ち、広い範囲にわたり高揚力装置が装備されています。

開発の経緯

DC-10の開発は1964年に遡ります。ダグラス社は大型旅客機の市場を見据えていましたが、競合他社に負けて具体的な成果を上げられずにいました。しかし、1966年3月、アメリカン航空の要望に対して、大型旅客機の仕様案が調整され、最終的には3発機としての設計に落ち着きました。名機DC-10が生まれた背景には、航空会社からの要望とダグラス社の開発理念が一致したという点があります。

流通と活用

最初の納入先であるアメリカン航空およびユナイテッド航空は、国内線および国際線の運航にDC-10を利用しました。DC-10は、長距離型の-30や-40を派生させ、ルフトハンザ航空、KLMオランダ航空などの大手航空会社でも幅広く使用されました。日本でも日本航空が-40型を使い、日本エアシステムやミネベア航空も導入しました。

事故と安全性

DC-10は運用初期に多くの事故を経験しましたが、その大部分は設計ミスから発生しました。特にトルコ航空981便墜落事故や、アメリカン航空191便墜落事故は、その後の航空安全や設計改善に大きな影響を与えました。しかし、時が経つにつれて安全対策が強化され、信頼性が改善されたことは確かです。2008年の調査によると、DC-10の事故発生率は同世代の航空機とほぼ同等であり、運用が長期化する中で点検やメンテナンスも充実しました。

現在の運用状況

2023年1月時点で、DC-10の旅客型は全て退役しましたが、貨物型は依然として運用されています。最大のオペレーターであったフェデックス・エクスプレスが2022年末に運用を終了し、現在はオービス・インターナショナルが運航する唯一の機体として残っています。

まとめ

DC-10は、アメリカン航空の要求に応じて生まれ、航空業界においてもその名を広めた機体です。設計理念、技術的な革新、そして安全性の向上を経て、長年にわたって広く利用されたDC-10は、航空機史における重要な一翼を担っています。

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