マクラーレン・M4B

マクラーレンM4B：短い歴史に刻まれた輝き

1967年、フォーミュラ1の世界に短いながらも鮮烈な足跡を残したマシン、マクラーレンM4B。トロージャンがブルース・マクラーレン・モーターレーシングのために製作したこのマシンは、その年の5戦のグランプリに出場しました。M4Bの誕生は、既存のM2BとM5Aの中間に位置する、より競争力の高いマシンへのニーズからでした。ベースとなったのはフォーミュラ2カーであるM4A。このマシンをグランプリ参戦に耐えうる仕様へと大きく改良を加え、M4Bは完成しました。

最も大きな変更点は燃料タンクの追加です。コックピットの両側に配置された2つの燃料タンクにより、グランプリレースの完走に必要な燃料を搭載できるようになりました。また、搭載されたエンジンはBRM社製の2.0リッターV8エンジン、タイプ56-2。このエンジンは、グラハム・ヒルが1962年のF1世界選手権でチャンピオンを獲得した際に使用した名機であり、その信頼性とパワーはM4Bの戦闘力を大きく支えました。さらに、後部ボディワークはBRMエンジンの搭載に合わせて大幅に改設計されています。

M4Bのデビュー戦は1967年のレース・オブ・チャンピオンズ、ブランズ・ハッチサーキットでした。予選ヒートでは4位と6位とまずまずの結果を残したものの、決勝レースではエンジントラブルによりリタイアという悔しい結果に終わりました。続くオウルトンパークでのスプリング・トロフィーでは両ヒートで5位、シルバーストーンでのBRDCインターナショナルトロフィーでも5位と、着実に経験を積み重ねていきます。

そして、M4Bにとって真価が問われたのは、1967年モナコグランプリでした。このレースで、M4Bの驚くべき競争力が明らかになります。その秘密は、他のマシンと比較して非常に短いホイールベースにありました。この短いホイールベースは、モナコの狭い路面で抜群の運動性を発揮し、レースでは3位を走行するまで追い上げました。しかし、終盤にバッテリーの電力低下というアクシデントに見舞われ、ピットストップでの交換を余儀なくされます。この影響で最終的には4位でフィニッシュとなりましたが、シーズン初となる貴重なポイントを獲得しました。

続くオランダグランプリでは、1周目でクラッシュ。リタイアという結果に終わりました。その後、マシンは修理されましたが、グッドウッドサーキットでのテスト走行中に炎上事故を起こし、修復不可能な状態となってしまいます。こうして、マクラーレンM4Bは短いながらも華々しいF1キャリアに幕を閉じました。わずか5戦のグランプリ出場でしたが、その存在は、フォーミュラ2マシンをベースにグランプリカーへと昇華させた、その挑戦と、モナコでの健闘といった数々のドラマとともに、F1の歴史に刻み込まれています。M4Bは、決して長くはなかったものの、その潜在能力の高さと、チームの挑戦の象徴として記憶に残る1台となりました。

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