マザー・ラヴ・ボーン

マザー・ラヴ・ボーン：早すぎた才能の光芒

マザー・ラヴ・ボーンは、1980年代後半にアメリカのシアトルで結成されたロックバンドです。グランジ・シーンが隆盛を迎える黎明期において、その独特な音楽性とカリスマ性で人気を集めましたが、フロントマンであるアンドリュー・ウッドの突然の死により、その活動は幕を閉じることとなりました。

バンド結成と初期の活動

1988年、マザー・ラヴ・ボーンは、元グリーン・リヴァーのメンバーであるジェフ・アメン（ベース）、ブルース・フェアウェザー（リードギター）、ストーン・ゴッサード（リズムギター）を中心に、元マルファンクションのアンドリュー・ウッド（ボーカル、ピアノ）、元10ミニット・ウォーニング／スキン・ヤードのグレッグ・ギルモア（ドラムス）という、実力派ミュージシャンが集結して結成されました。

結成直後から、彼らは精力的にレコーディングとライブ活動を展開し、シアトルの音楽シーンで急速に頭角を現しました。特に、アンドリュー・ウッドのアグレッシブなライブパフォーマンス、奇抜な衣装、そして夢想的な歌詞は、観客を魅了し、マザー・ラヴ・ボーンはシアトルで最も将来を期待されるバンドの一つとして注目を集めました。

デビューと悲劇的な結末

1988年11月、マザー・ラヴ・ボーンはポリグラムとレコード契約を結び、ポリグラムはバンド専用のレーベルとしてスタードッグを設立しました。1989年3月には、デビューEP『Shine』をリリースし、その音楽性は高い評価を受けました。その後、彼らはフルアルバムの制作に取り掛かり、11月にはレコーディングを完了させました。

1stアルバム『Apple』は1990年3月にリリースされる予定でしたが、発売予定日の数日前、長年薬物依存の問題を抱えていたアンドリュー・ウッドがヘロインのオーバードースにより脳死状態に陥りました。ウッドは病院で延命治療を受けましたが、意識が戻ることはなく、3月19日に家族と友人に看取られながら24歳という若さでこの世を去りました。

アンドリュー・ウッドの死により、マザー・ラヴ・ボーンは解散を余儀なくされ、唯一のアルバム『Apple』は同年7月にリリースされました。しかし、その音楽は、グランジ・シーンに大きな影響を与え、後のミュージシャンたちに多大なインスピレーションを与えました。

バンド解散後のメンバーの活動

アンドリュー・ウッドの死後、ジェフ・アメンとストーン・ゴッサードは、ウッドのルームメイトであり友人でもあったサウンドガーデンのクリス・コーネルを誘い、ウッドへのトリビュート・バンドであるテンプル・オブ・ザ・ドッグを結成しました。1991年4月には唯一のアルバム『テンプル・オブ・ザ・ドッグ』をリリースし、全米5位を獲得、プラチナディスクに認定されるなど、大きな成功を収めました。

その後、アメンとゴッサードは1990年にパール・ジャムを結成し、グランジ・シーンを代表するバンドとして世界的な成功を収めました。パール・ジャムは、結成から四半世紀以上が経過した現在も、第一線で活動を続けています。

ブルース・フェアウェザーは、ウッドの死後しばらく音楽活動から身を引いていましたが、1992年にラヴ・バッテリーの新ベーシストとして加入し、2枚のアルバム制作に参加しました。2006年には、新バンドThe Press Corpsを結成し、活動を再開しました。

グレッグ・ギルモアも解散後は活動を停止していましたが、1992年にChubby Childrenでドラムを叩き、その後もジャック・エンディノとのコラボレーションなどで活動しました。

マザー・ラヴ・ボーンは、短い活動期間ではありましたが、グランジ・シーンの黎明期において、その独創的な音楽性と強烈な個性で、確かな足跡を残しました。アンドリュー・ウッドの早すぎる死は、音楽史における大きな損失でありましたが、彼らの音楽は、今もなお多くの人々に愛され、影響を与え続けています。

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