マスタケ

マスタケ（鱒茸）

マスタケ（学名: Laetiporus cremeiporus）は、アイカワタケ科に属する食用のキノコで、独特なオレンジ色の傘が特徴です。この色合いは、魚の鱒の肉に似ているため、「鱒茸」という名前がつけられました。また、地域によってはアカキノコ（栃木県・福島県）、アカボウ・アカンボ（青森県）、ホクチタケ、マスキノコなどの名前でも知られています。

形態

このキノコの子実体は非常に大型で、傘の直径は15から50センチメートルにも達します。形状は半円形、扇形、イチョウ形など多様で、色彩は鮮やかなオレンジですが、成長するにつれて退色し、全体が白っぽくなります。特に傘の縁は淡い肌色で、久しぶりに見ると新たな環紋状の模様も現れます。傘の裏側は管孔状で、初めはクリーム色から始まり、時間とともに淡紅色へと変化します。なお、マスタケの肉は若いうちは柔らかくて弾力がありますが、徐々に硬くなり、最終的にはもろくなります。

分布・生態

このキノコは主に東アジアと西日本に分布し、木材腐朽菌の一種です。のきなみ夏から秋にかけて、ミズナラなどの広葉樹林や、カラマツ、ツガ、モミといった針葉樹林内の立ち木や倒木、切り株などに単生または重生することが多く見られます。傘が重なり合うこともしばしばあり、根元は融合することもあります。

分類

これまで、マスタケは針葉樹の枯れ木に発生するミヤママスタケと混同されていました。実は、地域によってその生態や味は異なることが知られています。遺伝子研究の結果、マスタケとミヤママスタケは異なる種であると確認され、前者が広葉樹型、後者が針葉樹型として分類されるようになりました。

食用・毒性

マスタケは食用として利用され、特に若い幼菌は人気があります。肉質が耳たぶのように弾力を持つ新鮮なものを選んで収穫しますが、成長しすぎたものは固くなり、食用には適しません。独特の香りを持つため、好みは分かれますが、調理法も多彩です。一般的には天ぷらやフライ、すき焼き、バター炒め、野菜炒め、さらにはサラダやトマト煮などに使われます。

ただし、火が通りにくく、生で食べると中毒を引き起こすことがあるため、適切に加熱することが求められます。実際、欧米ではこのキノコの仲間は有毒とされ、日本国内でも生食に近い食べ方をした場合には中毒症状が見られることがあります。これにより、下痢や嘔吐、腹痛、めまい、頻脈といった症状が現れることが知られています。

近似するキノコ

幼菌時はシロカイメンタケ（Pseudophaeolus soloniensis）と見た目が似ていますが、木質化したため食用には適しません。一方、ミヤママスタケは傘の色はオレンジですが、下面の色は傘と同色または黄色である点で異なります。正確な識別が重要です。

マスタケは自然の恵みを享受できるキノコとして多くの人々に親しまれていますが、収穫の際には十分な注意が必要です。

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