マセラティ・MC20

マセラティMC20：イタリアン・スーパーカーの新たな金字塔

マセラティMC20は、2020年、マセラティブランドの新たな時代を切り開くべく発表されたスーパーカーです。MC12以来16年ぶりとなる自社開発のスーパーカーとして、世界中から大きな注目を集めました。発表は当初2020年5月を予定していましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行の影響を受け、9月に延期されました。それでも、モデナで開催されたブランドリローンチイベント「MMXX:Time to be audacious」で華々しくワールドプレミアを迎え、日本とアメリカでも同時に発表されました。

MC20という車名は、「MC」がマセラティ・コルセ（Maserati Corse、イタリア語でレーシングの意）の略、「20」が2020年という新たな時代の幕開けの年を表しています。ブランドのアイデンティティであるエレガンス、パフォーマンス、快適性を追求し、「100％メイド・イン・モデナ」「100％メイド・イン・イタリー」を基本理念に開発されました。マセラティ車としては22年ぶりの自社製エンジン搭載という点も特筆すべきです。将来の電動化にも対応できる設計となっており、時代の先を見据えた技術が投入されています。また、MC12とは異なり、カタログモデルとして販売される一方、モータースポーツへの復帰も計画されており、将来の展開にも期待が高まります。2024年には電気自動車版「フォルゴーレ」の発売も予定されています。

圧倒的なパフォーマンスを生み出す「ネットゥーノ」エンジン

MC20のパワートレインの中核を担うのは、3.0L 90度V型6気筒DOHCツインターボエンジン「ネットゥーノ（Nettuno）」です。このエンジンは、マセラティの技術陣が長年の経験と情熱を注ぎ込んで開発した渾身の作です。最大の特徴は、F1カーで採用されているプレチャンバー（副燃焼室）をロードカーで初めて採用した「MTC（マセラティ・ツイン・コンバスチョン）」と呼ばれる革新的な燃焼システムです。通常の点火とプレチャンバーによる点火を使い分けることで、燃焼効率とレスポンスの大幅な向上が実現されました。さらに、ポート噴射と直噴を併用することで、各気筒に点火プラグとインジェクターを2個ずつ搭載。これにより、リッターあたり210PSという驚異的な高出力、最高出力630PS/7,500rpm、最大トルク74.4kgf・m/3,000-5,500rpmを達成しています。トランスミッションは8速DCTが組み合わされています。低重心化のためドライサンプ方式を採用、ターボチャージャーもバンクの内側ではなく両サイドの下側に配置されるなど、細部まで徹底した設計がなされています。

「ネットゥーノ」エンジンはMC20に先駆けて2020年7月に発表され、マセラティは今後他の車種への搭載も予定していることを明らかにしています。実際、2022年に発表されたコンパクトSUV「グレカーレ トロフェオ」には、デチューンされた「ネットゥーノ」エンジンが搭載されています。

洗練されたデザインと高い空力性能

MC20のエクステリアデザインは、マセラティのブランドアイデンティティであるエレガンス、パフォーマンス、快適性を基本としています。ボディは2ドアクーペで、将来的なカブリオレモデルも視野に入れた設計となっています。特徴的なのは、マセラティ史上初となるバタフライドアの採用です。

デザインコンセプトとして、ボディのアッパー（上部）とアンダー（下部）で異なるテーマが採用されています。アッパーは、サイドエアダクトやエアロパーツを排除し、美しいボディラインを追求。リアスポイラーも装着されていませんが、ボディ自体の空力性能の向上により十分なダウンフォースを確保しています。一方、アンダーは機能美を重視し、カーボンファイバー製パーツを多用することで軽量化と高剛性を両立しています。ダラーラの風洞実験室で2,000時間以上のテストと1,000回以上のCFDシミュレーションが行われ、空力性能は徹底的に磨き上げられています。フロントグリルやサイド、リアガラスのルーバーなどにはマセラティ伝統のトライデントエンブレムが配され、ブランドのアイデンティティを際立たせています。外装色は、MC20のために開発された6色の専用色が用意されています。

ドライバー重視のインテリアと先進的なテクノロジー

インテリアは、ドライバーが運転に集中できる環境を第一に設計されています。カーボンファイバー製のセンターコンソールには、ワイヤレススマートフォン充電器、ドライビングモードセレクター（GT、Wet、Sport、Corsa、ESC Off）、ギアシフトボタン、パワーウィンドウスイッチ、マルチメディアシステムコントロールなどが集約され、機能性と操作性を高めています。素材にはレザーとアルカンターラが使用され、上質な空間が演出されています。

コネクテッドシステムには「マセラティ・コネクト・プログラム」を搭載。常時インターネットに接続することで、ナビゲーションシステム、Alexa、Wi-Fiスポットなどのサービスが利用可能です。スマートフォンやスマートウォッチ専用のアプリによる管理も可能です。

驚異的なパフォーマンスと高い評価

MC20の車重は1,500kgで、パワーウェイトレシオは2.33kg/PS。マセラティによると、クラス最高値を誇ります。0-100km/h加速は2.9秒以下、最高速は325km/h以上と、圧倒的なパフォーマンスを達成しています。

2021年には、「第36回国際自動車フェスティバル」で「2021年の最も美しいスーパーカー」を受賞、「レッド・ドット・デザイン賞」のプロダクトデザイン部門で最上位の「ベスト・オブ・ザ・ベスト賞」を受賞するなど、そのデザインと性能は高く評価されています。

MC20のバリエーション

MC20は、クーペモデルに加え、オープンモデルの「MC20 チェロ（Cielo）」、レース専用モデルの「MC20 GT2」もラインナップされています。「チェロ」はイタリア語で「空」を意味し、格納式のスマートガラスルーフを採用。ルーフの開閉時間はわずか12秒です。「MC20 GT2」は、SRO GT2規定に準拠したレース専用モデルで、2023年のGT2ヨーロピアン・シリーズへの参戦を予定しています。

MC20は、マセラティの技術力とデザインセンスが凝縮された、まさに珠玉のスーパーカーです。その圧倒的なパフォーマンスと美しいデザインは、多くのカーファンを魅了し続けています。

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