マゼラン渦巻銀河

マゼラン渦巻銀河（Magellanic spiral）

マゼラン渦巻銀河とは、天文学的な分類でSm型に位置づけられる矮小銀河の一群を指します。これらの銀河は通常、一本の特徴的な渦状腕を持っており、その形態から識別されます。名称は、その典型的な例であり、最もよく知られた天体でもある大マゼラン雲（Large Magellanic Cloud）に由来しています。

形態と分類

マゼラン渦巻銀河は、古典的なハッブル分類を改良したジェラール・ド・ボークルールによる銀河分類体系において、Sm型として定義されました。このSm型は、棒状構造の有無によってさらにSAm型（非棒状）、SBm型（棒状）、SABm型（中間）に細分化されます。SAm型は中心に棒状構造が見られないタイプ、SBm型は明確な棒状構造を持つタイプ、SABm型はその中間的な特徴を持つタイプです。

これらの銀河は、完全に構造が失われた不規則銀河（Irr型）とは異なり、ある程度の規則的な構造、特に一本の渦状腕を有しています。一方で、複数の明確な渦状腕を持つ典型的な渦巻銀河（S型）や棒渦巻銀河（SB型）ほどはっきりとした構造ではありません。そのため、マゼラン渦巻銀河は、構造がより発達した矮小渦巻銀河と、ほとんど構造を持たない不規則銀河の間の形態を持つ存在だと考えられています。特にSm型や、マゼラン不規則銀河と呼ばれるIm型は、構造を持つ不規則銀河（Irr-1型）の一部としても分類されることがあります。

Sm型の中には、銀河間の相互作用などの影響で、本来の形が変形し、非対称な形態を示すようになったものもあるとされています。また、矮小型のマゼラン渦巻銀河はdSm型と呼ばれ、分類体系によっては矮小渦巻銀河に含められたり、矮小不規則銀河として扱われたりすることもあります。

分類の歴史

マゼラン渦巻銀河の分類は、20世紀後半に天文学者ジェラール・ド・ボークルールが、従来のハッブル分類をより詳細に記述できるように改良した際に導入されました。彼は、私たちの銀河系の伴銀河である大マゼラン雲と小マゼラン雲の形態に着目し、これらの銀河に見られる一本の渦状腕や不規則性を考慮して、Sm型やIm型といった新しい分類を設けたのです。これは、銀河の形態的多様性をより適切に表現するための試みでした。

代表的なマゼラン渦巻銀河

マゼラン渦巻銀河には、様々な天体が含まれます。特に代表的な棒状マゼラン渦巻銀河（SBm型）には、分類のプロトタイプである大マゼラン雲や小マゼラン雲が挙げられます。これらの銀河は南天で肉眼でも見ることができ、古くから航海の目印としても利用されてきました。

その他、マゼラン渦巻銀河に分類される天体として、以下のようなものがあります。

マゼラン棒渦巻銀河（SBm）
大マゼラン雲
小マゼラン雲
NGC 1311
NGC 4618
NGC 4236
NGC 55
NGC 4214
NGC 3109
マゼラン中間渦巻銀河（SABm）
NGC 4625
NGC 5713
マゼラン非棒状渦巻銀河（SAm）
NGC 5204
* NGC 2552

これらの銀河の研究は、銀河の形成や進化、特に矮小銀河がどのように構造を獲得・維持していくのかを理解する上で重要な手がかりとなっています。

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