マダコ

マダコ（真蛸）

マダコ（Octopus sinensis）は、タコ目マダコ科に属するタコの一種です。東アジア沿海の熱帯・温帯海域に広く分布し、日本では青森西海岸から宮城県以南で見られます。本州以南では、一般的に「タコ」といえばこのマダコを指します。

分類

かつてはOctopus vulgarisという学名が用いられていましたが、研究により地中海・大西洋に産する種とは別種と判明し、Octopus sinensisが正しい学名とされました。

特徴

体長: 腕を含めて約60cm。腕は胴体の約3倍の長さ。
体表: 低い突起が密生し、全身の皮膚に色素細胞が分布。
体色変化: 周囲の環境に合わせて体色や突起の長さを数秒で変化させ、擬態します。
知能: 無脊椎動物の中では特に知能が高いと考えられています。
生息場所: 浅い海の岩礁やサンゴ礁。
食性: 夜行性で、甲殻類や二枚貝を捕食します。
その他: 危険を感じると墨を吐いたり、腕を自切して逃げたりします。自切した腕は再生します。

オスとメスは、体の大きさ、交接腕の有無、吸盤の並び方で区別できます。

生息環境

外洋に面した海域に多く、内湾には少ない傾向があります。真水を嫌うため、汽水域には生息しません。基本的には同じ海域に留まって生息していますが、常磐沖では季節によって移動するものも確認されています。

食性

夜行性で、昼間は岩穴などに潜み、夜になると甲殻類や二枚貝を捕食します。獲物を捕らえる際には、腕で絡め捕り、毒性のある唾液を注入して麻痺させ、吸盤で殻をこじ開けます。この唾液は人間にも有害で、咬まれると激しい痛みが続くことがあります。

天敵

天敵としては、人間以外に海鳥、ウツボ、沿岸性のサメ、エイなどが挙げられます。

生活史

繁殖期は春から初夏で、交尾を終えたメスは岩陰に数万から十数万個の卵を産み付けます。卵は房状に固まり、「海藤花」とも呼ばれます。メスは孵化するまで卵の世話をし、孵化を見届けた直後に死んでしまいます。孵化した子ダコは海流に乗って分布を広げ、海底に定着した後は2年ほどで成長し、繁殖して寿命を終えます。

利用

日本では重要な水産資源であり、タコ類の中では最も漁獲量が多いです。明石ダコは特に珍重されます。漁獲方法としては、タコ壺漁が主流です。また、タコは古くから食用とされており、弥生時代の遺跡からもタコ壺と思われる土器が発掘されています。

調理法は多岐にわたり、刺身、酢の物、煮物、寿司ネタ、燻製、干物、たこ焼きなど様々な料理に利用されます。

日本のタコ需要は大きく、輸入も盛んです。モロッコやモーリタニアなどから輸入されていますが、乱獲による資源減少が問題となっています。

近年、ヨーロッパでもタコを食用とする文化が広まり、国際市場での競争が激化し、価格が高騰しています。日本水産はマダコの完全養殖技術を確立し、今後の資源確保に期待が寄せられています。

その他

タコは英語で「デビル・フィッシュ」と呼ばれることもあります。

関連項目

イイダコ
ミズダコ
蛸壺
たこ焼き
パウル (タコ)
* Octopus vulgaris

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