マチネ・ポエティク

マチネ・ポエティクの概要

マチネ・ポエティクは、1942年に始まった日本の文学運動で、特に定型押韻詩を創作することを目的としていました。この運動には、主に加藤周一、中村真一郎、福永武彦、窪田啓作、原條あき子といった文学者が関与しました。運動の名称が正式に外部に示されたのは戦後の1946年で、刊行された「世代」創刊号から第6号までに掲載された「CAMERA EYES」において確認できます。

この運動の背景には、フランス文学者である福永武彦の近代日本文学に対する厳しい批評や、日本の文学者が外国語に対して無理解であるとの批判が存在しました。福永や加藤、中村らは共著で『1946・文学的考察』を発表し、文学における「他者としての自己」の重要性を強調しました。そのためには外国語を学び、それを基に詩作を行うことを求めたのです。

戦後の1948年、中村らは「マチネ・ポエティク詩集」を発表しましたが、日本語による押韻詩の制作には否定的である三好達治から厳しい評価を受けました。三好は『世界文学』1948年4月号で彼らの試みについて批判し、その結果、中村は自己の意見を再考せざるを得ない状況に追い込まれました。そして1950年には「終息宣言」を出し、運動は一旦の終息を迎えることとなりました。

その後、参加したメンバーたちは小説や評論に移行し、詩作はほとんど行われなくなりました。特に福永は1947年から肋膜炎のために療養生活を送り、その議論には参加しませんでした。ですが、音楽界にも影響を与え、中田喜直は1950年に「マチネ・ポエティクによる4つの歌曲」を作曲しました。曲に合わせた詩は、福永の『火の鳥』や加藤の『さくら横ちょう』など多岐にわたりました。

マチネ・ポエティクは文学運動としては不完全な結果に終わりましたが、その後も日本の定型押韻詩や脚韻詩の挑戦は続きました。例えば、谷川俊太郎は『六十二のソネット』や『ことばあそびうた』といった作品を発表し、新たな表現を模索しました。また、1991年には飯島耕一の手により「日本定型詩協会」が設立され、定型詩に対する試みは現在も引き継がれています。

このように、マチネ・ポエティクは日本の詩の可能性を広げる重要な試みであったと言えるでしょう。

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