マッターホルン・ゴッタルド鉄道Ge4/4形電気機関車
マッターホルン・ゴッタルド鉄道のGe4/4形電気機関車は、スイス南部のメーターゲージ路線で活躍する山岳鉄道向け電気機関車です。この形式は、現在のマッターホルン・ゴッタルド鉄道の前身の一つであるフルカ・オーバーアルプ鉄道によって、フルカベーストンネルを通過する自動車、バイク、自転車などを輸送する列車フェリーの牽引機として導入されました。1979年に2両（81号機、82号機）が製造されています。
本形式は、同じくメーターゲージの鉄道であるレーティッシュ鉄道のGe4/4II形電気機関車を設計のベースとしつつ、独自の仕様を持っています。機械部分はSLM社、電気部分はBBC社が製造を担当しました。制御方式にはサイリスタ位相制御を採用し、1時間定格出力1700kW（425kW×4基）、1時間定格牽引力113.8kNを発揮する汎用性の高い性能を備えています。特に18パーミルの勾配区間では350tの列車を80km/hで牽引可能であり、山岳路線での粘着運転能力に優れています。製造された2両には、沿線地域の名称にちなみ81号機に「Wallis」、82号機に「Uri」という愛称が付けられました。
車体は、同時期に製造されたDeh4/4 91-96形荷物電車に似た、角ばった軽量構造の鋼製車体です。前面は緩やかな折妻で2枚窓、窓下部に大型の丸型前照灯が左右に、上部中央に小型の丸型前照灯が当初設置されていましたが、後にスイスの鉄道車両で標準的な小型の角形前照灯・標識灯ユニットに交換されています。側面はコルゲーション板を使用し、屋根上にはパンタグラフ周辺に空気取り入れ用のルーバー、中央に発電ブレーキ用の主抵抗器を装備しています。屋根は取り外し可能な構造です。運転室は円形のハンドル式マスターコントローラーを備え、右側のみに乗降扉があり、そちら側の窓には電動バックミラーが設置されています。
車体塗装は、初期は赤をベースに、車体裾部がダークグレー、境界部分と側面中央下部に白帯が入るデザインでした。その後、側面のダークグレー部が拡大され白帯の位置が変更されたり、現行のマッターホルン・ゴッタルド鉄道塗装では裾部のダークグレー幅が縮小され白帯が省略されるなど、変遷しています。フルカ・オーバーアルプ鉄道時代はFO、マッターホルン・ゴッタルド鉄道初期はMGBのロゴなどが描かれ、正面中央には機体名のエンブレムが飾られていました。屋根と屋根上機器は銀色、床下機器と台車はダークグレーです。
走行機器の制御方式は、サイリスタ位相制御です。車体中央に主変圧器を配置し、その前後に1台ずつ設置された制御装置で台車ごとの2台の主電動機を制御します。これらは油冷式で、専用の冷却システムを備えています。ブレーキ装置は、最大75kNの発電ブレーキ力を発揮するほか、空気ブレーキ（機関車および列車フェリー用）、手ブレーキ、列車フェリー以外の列車用として真空ブレーキ装置を装備しています。主電動機はBBC製Typ 6FRO 4338直流複巻整流子電動機を4台搭載し、連続定格出力380kW、1時間定格出力425kWです。台車は軸距2600mm、車輪径1070mmの操舵台車で、曲線通過時の横圧を軽減する構造です。主電動機はBBC製のスライドベアリング式吊掛式で装架され、車軸と連結されています。減速比は1:5.118です。その他、シングルアーム式パンタグラフ2基、各種送風機、オイルポンプ、電動空気圧縮機、電動真空ポンプ、蓄電池などの補機類を装備しています。
本形式の主要な運用区間は、フルカベーストンネルを挟むレアルプとオバーワルド間です。この区間は、全長17.7kmのうちトンネル部が15.4kmを占め、トンネル内の最急勾配は17.5パーミル、トンネル外には短距離ながら29.2パーミルの勾配が存在します。列車フェリーは、制御客車、ランプ車、車運車で組成され、Ge4/4形はこれらの車両を挟む、あるいは片側に連結するプッシュプル方式で運行されます。列車の最高速度は90km/hです。搭載できる車両には寸法や重量の制限があり、大型車用のランプ車はより大きな車両を積載可能です。定期検査などでGe4/4形が使用できない場合、空気ブレーキを備えたDeh4/4II形荷物電車の重連やHGe4/4II形電気機関車が代わって列車を牽引します。
歴史的なエピソードとして、1980年には機関車が不足していたレーティッシュ鉄道へ短期間貸し出され、フルカ・オーバーアルプ鉄道時代の塗装のまま運行されたことがあります。製造から年月が経過し、老朽化と予備部品の確保が困難になったため、82号機は2017年11月に廃車となりました。現在、列車フェリーの牽引は残る81号機とHGe4/4II形が主に担当しています。
本形式は、ベースとなったレーティッシュ鉄道Ge4/4II形電気機関車とは外観や台車構造は異なりますが、基本的な性能は同等です。
本形式は、同じくメーターゲージの鉄道であるレーティッシュ鉄道のGe4/4II形電気機関車を設計のベースとしつつ、独自の仕様を持っています。機械部分はSLM社、電気部分はBBC社が製造を担当しました。制御方式にはサイリスタ位相制御を採用し、1時間定格出力1700kW（425kW×4基）、1時間定格牽引力113.8kNを発揮する汎用性の高い性能を備えています。特に18パーミルの勾配区間では350tの列車を80km/hで牽引可能であり、山岳路線での粘着運転能力に優れています。製造された2両には、沿線地域の名称にちなみ81号機に「Wallis」、82号機に「Uri」という愛称が付けられました。
車体は、同時期に製造されたDeh4/4 91-96形荷物電車に似た、角ばった軽量構造の鋼製車体です。前面は緩やかな折妻で2枚窓、窓下部に大型の丸型前照灯が左右に、上部中央に小型の丸型前照灯が当初設置されていましたが、後にスイスの鉄道車両で標準的な小型の角形前照灯・標識灯ユニットに交換されています。側面はコルゲーション板を使用し、屋根上にはパンタグラフ周辺に空気取り入れ用のルーバー、中央に発電ブレーキ用の主抵抗器を装備しています。屋根は取り外し可能な構造です。運転室は円形のハンドル式マスターコントローラーを備え、右側のみに乗降扉があり、そちら側の窓には電動バックミラーが設置されています。
車体塗装は、初期は赤をベースに、車体裾部がダークグレー、境界部分と側面中央下部に白帯が入るデザインでした。その後、側面のダークグレー部が拡大され白帯の位置が変更されたり、現行のマッターホルン・ゴッタルド鉄道塗装では裾部のダークグレー幅が縮小され白帯が省略されるなど、変遷しています。フルカ・オーバーアルプ鉄道時代はFO、マッターホルン・ゴッタルド鉄道初期はMGBのロゴなどが描かれ、正面中央には機体名のエンブレムが飾られていました。屋根と屋根上機器は銀色、床下機器と台車はダークグレーです。
走行機器の制御方式は、サイリスタ位相制御です。車体中央に主変圧器を配置し、その前後に1台ずつ設置された制御装置で台車ごとの2台の主電動機を制御します。これらは油冷式で、専用の冷却システムを備えています。ブレーキ装置は、最大75kNの発電ブレーキ力を発揮するほか、空気ブレーキ（機関車および列車フェリー用）、手ブレーキ、列車フェリー以外の列車用として真空ブレーキ装置を装備しています。主電動機はBBC製Typ 6FRO 4338直流複巻整流子電動機を4台搭載し、連続定格出力380kW、1時間定格出力425kWです。台車は軸距2600mm、車輪径1070mmの操舵台車で、曲線通過時の横圧を軽減する構造です。主電動機はBBC製のスライドベアリング式吊掛式で装架され、車軸と連結されています。減速比は1:5.118です。その他、シングルアーム式パンタグラフ2基、各種送風機、オイルポンプ、電動空気圧縮機、電動真空ポンプ、蓄電池などの補機類を装備しています。
本形式の主要な運用区間は、フルカベーストンネルを挟むレアルプとオバーワルド間です。この区間は、全長17.7kmのうちトンネル部が15.4kmを占め、トンネル内の最急勾配は17.5パーミル、トンネル外には短距離ながら29.2パーミルの勾配が存在します。列車フェリーは、制御客車、ランプ車、車運車で組成され、Ge4/4形はこれらの車両を挟む、あるいは片側に連結するプッシュプル方式で運行されます。列車の最高速度は90km/hです。搭載できる車両には寸法や重量の制限があり、大型車用のランプ車はより大きな車両を積載可能です。定期検査などでGe4/4形が使用できない場合、空気ブレーキを備えたDeh4/4II形荷物電車の重連やHGe4/4II形電気機関車が代わって列車を牽引します。
歴史的なエピソードとして、1980年には機関車が不足していたレーティッシュ鉄道へ短期間貸し出され、フルカ・オーバーアルプ鉄道時代の塗装のまま運行されたことがあります。製造から年月が経過し、老朽化と予備部品の確保が困難になったため、82号機は2017年11月に廃車となりました。現在、列車フェリーの牽引は残る81号機とHGe4/4II形が主に担当しています。
本形式は、ベースとなったレーティッシュ鉄道Ge4/4II形電気機関車とは外観や台車構造は異なりますが、基本的な性能は同等です。
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