マツダ・ペルソナ

マツダ・ペルソナ：美しさと不便さの狭間で生きた孤高の4ドアハードトップ

マツダ・ペルソナは、1988年から1992年まで販売された、4ドアピラーレスハードトップ型の乗用車です。その最大の特徴は、何と言ってもデザイン性の高さでしょう。「インテリアイズム」「ビューティフル・クルージング」というキャッチコピーが示す通り、女優のイングリッド・バーグマンをイメージした、洗練された内外装が魅力でした。ハイソカーブーム真っ只中の登場だったこともあり、内装には上質な革がふんだんに使用され、当時のカタログではエクステリアの写真よりも先にインテリアの写真が掲載されるという、異例ずくめの扱いを受けていました。

この時代の自動車広告では、斬新なデザインと高級感を前面に出すことが主流でした。ペルソナも例外ではなく、CMには俳優で映画監督の奥田瑛二を起用し、洗練されたイメージを積極的に発信していました。インテリアはデザインを最優先した設計となっており、グローブボックスを廃し、その代わりに助手席下に収納ボックスを設置した点がユニークです。さらに、当時としては画期的だった禁煙車仕様も設定され、灰皿とライターはオプション扱いでした。シートベルト機構も独特で、テンショナー本体がリアドアに内蔵されるなど、他車にはない特徴を備えていました。後席のアームレストは取り外し可能という、遊び心も感じさせる設計も魅力でした。フロントグリルには、仮面をモチーフとした七宝製のエンブレムがあしらわれ、高級感を演出していました。

エンジンは、前期型が1800cc SOHCと2000cc DOHCの2種類、後期型では1800ccもDOHC化され、パワーアップを果たしました。グレードは、布シートのタイプAと本革シートのタイプBの2種類が設定されていました。しかし、この美しいデザインと豪華な内装の裏には、大きな課題がありました。4ドアピラーレスハードトップというボディ形状は、後部座席の狭さを招き、これが販売不振の一因となりました。

1989年には、姉妹車としてよりスポーティーなユーノス300が発売されました。こちらはペルソナにはない灰皿とライターが標準装備され、ユーザー層の違いを狙った戦略が見られました。その後もマイナーチェンジを重ね、1990年には1800ccエンジンもDOHC化、運転席パワーシートを標準装備とするなど、改良が続けられました。しかし、販売状況の改善には至らず、1991年末には生産終了、1992年には販売も終了しました。その短い生涯の中で、ペルソナは1988年度ベストカーインテリアオブザイヤーを受賞するなど、デザイン面での高い評価を得ていました。

ペルソナの後継車種として登場したのが、マツダ・アンフィニMS-8です。ペルソナの優れたデザイン性を継承しつつ、後部座席の居住性向上を図ったモデルでした。競合車種としては、トヨタ・カリーナED、日産・ブルーバード、ホンダ・インテグラ、三菱・エメロードなどが挙げられます。これらの車種は、バブル景気という時代背景の中で、それぞれのメーカーが独自の個性と魅力を追求したモデルでした。ペルソナは、その中で独特の存在感を放ち、短いながらも強烈な印象を残したモデルと言えるでしょう。ベース車となったマツダ・カペラ、そして姉妹車のユーノス300と比較することで、ペルソナ独自の個性とデザイン哲学をより深く理解することができるでしょう。その革新的なデザインと、快適さよりもデザイン性を優先した大胆な設計は、多くの自動車ファンに記憶されています。

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