マツダ・ミレーニア

マツダ・ミレーニア：10年基準の高級セダン

マツダ・ミレーニアは、同社がかつて製造・販売していたセダン型の乗用車です。その歴史は、1993年にマツダのマルチブランド戦略の一環として誕生したユーノスブランドのフラッグシップモデル「ユーノス800」に始まります。

ユーノス800時代：10年先を見据えた技術

ユーノス800は「十年基準」という開発コンセプトを掲げ、当時としては画期的な技術を数多く搭載していました。V型6気筒エンジンと前輪駆動を組み合わせたプラットフォームは、この車のために新規開発されたものでした。量産車初となるミラーサイクルエンジン（KJ-ZEM型）は、燃費性能と環境性能の両立を目指した革新的な技術でした。さらに、リショルム・コンプレッサ式スーパーチャージャー、4輪操舵システム（4WS）、両席エアバッグ、ABS、トラクションコントロールシステム（TCS）など、先進の安全・快適装備が充実していました。アルミボンネットやハイレフコート塗装といった、高級感を演出する装備も備えられていました。

ユーノス800はユーノス店での販売が中心でしたが、マツダ店でも併売されており、幅広い顧客層へのアプローチを図っていました。1995年には特別限定車「25Fミレーニア」が発売され、1996年にはマイナーチェンジを実施。この際に正式名称が「マツダ・ユーノス800」に変更され、リアエンブレムにも「MAZDA」のロゴが追加されました。グレードも整理され、ミラーサイクルエンジン搭載車は「MC」というグレード名に統一されました。また、2.5Lの廉価グレードに「ミレーニア」の名前が与えられ、後の車名変更への布石となりました。

欧州市場では「Xedos 9」として販売され、当初は北米向け高級ブランド「アマティ」での展開も予定されていましたが、アマティブランドの計画自体が中止されたため実現しませんでした。マツダ内でのクラスは「9」とされましたが、センティアやMS-9とは異なり、前輪駆動を採用していました。

ミレーニア時代：市場の変化と生産終了

1997年7月、マツダのマルチブランド戦略の見直しに伴いユーノスブランドが廃止されると、ユーノス800は「マツダ・ミレーニア」へと改名しました。その後もマイナーチェンジを繰り返しながら販売されました。1998年のマイナーチェンジでは、エクステリアデザインやアルミホイールデザインの変更、2.0Lエンジンの追加などが行われました。

2000年にはビッグマイナーチェンジを実施し、フロントフェイスのデザイン変更や、マツダの統一デザインコンセプトである「コントラストインハーモニー」の採用、そしてBピラーへの発泡ウレタン充填といった、大規模な改良が施されました。しかし、この際に燃費性能と環境性能で評価の高かったミラーサイクルエンジンは廃止されました。

2002年には排出ガス規制強化の影響で2.0Lモデルが廃止され、2.5Lモデルのみの販売となりました。そして2003年8月、開発コンセプト「十年基準」の期間が満了したことを機に生産が終了しました。ミレーニアは、高級車市場の低迷や採算性の問題から後継車種が開発されることはありませんでした。このため、ミレーニアを最後にマツダは長らくラージクラスのセダンをラインナップから外しており、2024年現在、セダンの最上級モデルはMAZDA3となっています。

ミレーニアは、時代の変遷の中で誕生し、消えていった1台です。しかし、その革新的な技術と、10年先を見据えた開発姿勢は、マツダの歴史において重要な1ページを刻んでいます。

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