マツダ・CX-8

マツダ CX-8：3列シートSUVの進化と歴史

マツダCX-8は、2018年から2023年まで販売されていた同社の大型クロスオーバーSUVです。マツダのブランドメッセージである『魂動（こどう）-Soul of Motion』のデザイン哲学と『SKYACTIV TECHNOLOGY』を全面的に採用し、日本市場における同社のクロスオーバーSUVのフラッグシップモデルとして位置付けられていました。

ミニバン市場への挑戦

CX-8の開発背景には、国内ミニバン市場の縮小という現実がありました。マツダは、それまでミニバン市場でプレマシーやビアンテを販売していましたが、CX-8の発売を機にこれらの車種の販売を終了しました。これは、当時のマツダの代表取締役社長兼CEOである小飼雅道氏も言及していたように、国内ミニバン市場の先細りを踏まえ、3列シートSUVという新たなカテゴリーで市場を開拓しようという戦略に基づいていました。CX-8は、3列目シートも十分な居住性を確保し、6人または7人が快適に過ごせる広々とした室内空間を実現することで、ミニバンの代替として選ばれることを目指していました。

エンジンとトランスミッション

CX-8は、発売当初はSKYACTIV-D 2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンのみを搭載していました。このエンジンは、段付きエッグシェイプピストンや可変ジオメトリーターボチャージャーなどの先進技術を採用し、同社のCX-5に搭載されていた同型式エンジンと比較して、最高出力と最大トルクを向上させていました。その後、2018年10月にはSKYACTIV-G 2.5L直列4気筒自然吸気エンジンとSKYACTIV-G 2.5T直列4気筒ターボエンジンの2種類のガソリンエンジンが追加され、顧客の選択肢が広がりました。トランスミッションは全モデルで6速ATのSKYACTIV-DRIVEが採用されていました。

シャーシとボディ

CX-8のシャーシは、CX-9をベースに開発されました。サスペンションは、CX-9の基本構造を踏襲しつつも、減衰力などをCX-8専用に調整することで、高い走行安定性を実現していました。ブレーキシステムもCX-9から流用されており、高い制動力を確保していました。テールランプもCX-9と共通でしたが、車幅の違いを考慮して、左右をつなぐメッキガーニッシュはCX-8専用設計となっていました。

室内空間と安全性能

CX-8の2列目シートは、6人乗り用の左右独立型キャプテンシートと7人乗り用のベンチシートが設定されていました。特に最上級グレードのキャプテンシートには、USB端子付きの大型コンソールボックスが装備されていました。荷室容量は、3列目シート使用時で239L、3列目シート格納時で572Lを確保していました。また、トランクボード下にはサブトランクも備えられており、使い勝手の良さが追求されていました。安全面では、マツダの先進安全技術であるi-ACTIVSENSEを標準装備し、360°ビューモニターやアクティブボンネットなどの安全装備も充実していました。

グレード展開と特別仕様車

CX-8は、発売当初から複数のグレードが設定され、顧客のニーズに合わせた選択が可能でした。その後、商品改良やマイナーチェンジによって、エンジンバリエーションの追加、安全装備の充実、特別仕様車の設定など、継続的な進化が図られました。例えば、2019年には8インチのセンターディスプレイ、2020年には創立100周年記念車、2022年にはマイナーチェンジによるデザイン変更や新グレードの追加などが行われました。

生産終了

マツダは2023年10月31日、CX-8の生産終了を発表しました。約6年にわたる販売期間を経て、その歴史に幕を閉じました。2022年11月に実施されたマイナーチェンジモデルも、わずか1年で生産が終了しました。販売は流通在庫のみとなり、2023年12月には公式サイトからも削除されました。

まとめ

マツダCX-8は、国内ミニバン市場の縮小という状況の中で、3列シートSUVという新たな市場を切り開こうとした意欲的なモデルでした。広い室内空間、高い安全性能、そして多様なエンジン・グレード展開によって、多くの顧客に選ばれてきました。その生産終了は、自動車市場の変化を反映する出来事と言えるでしょう。CX-8の登場は、日本の自動車業界におけるSUV人気拡大の大きな転換点の一つとして記憶されるでしょう。

もう一度検索