マツダ・RX500

マツダ RX-500：幻のロータリー・スーパーカー

1970年、東京モーターショーの会場に、人々を驚愕させる一台のコンセプトカーが登場しました。それが、マツダ RX-500です。この車は、後にマツダのロードスター開発にも携わる福田成徳氏率いるデザインチームによって生み出された、ロータリーエンジンを搭載したミッドシップ・スーパーカーでした。

圧倒的なパフォーマンスと斬新なデザイン

RX-500の心臓部には、レース仕様にチューニングされた10A型ロータリーエンジンが搭載されています。このエンジンは、250馬力という驚異的なパワーを生み出し、最高速度は250km/hに達しました。パワフルなエンジンと4速MTの組み合わせは、まさにスーパーカーと呼ぶにふさわしい走りを実現しています。

さらに、RX-500のデザインは非常に独創的です。ガルウィング式のエンジンフードや、シザーズドアといった、当時としては斬新な機構が採用されており、人々の目を惹きつけました。ボディカラーは、発表当初はグリーンでしたが、モーターショー公開時にはオレンジ、そして最終的にシルバーへと変化していったようです。デザインのこだわりは、細部にも及んでいます。160km/hを超えると緑色のランプ、アクセルオフで黄色のランプが点灯する速度表示灯のようなテールライトも、その一例と言えるでしょう。

3つのデザインコンセプト

RX-500の開発においては、リアデザインに3つのコンセプトが検討されました。日産EXAを彷彿とさせる換装前提のデザイン、サバンナRX-7のようなハッチにスポイラーを備えたロードスポーツクーペ、そしてルーバーとリアウィングを持つレーシングマシン、そしてスタイリッシュなコーダトロンカのグランツーリスモです。これらは縮小クレイモデルとして製作されましたが、最終的にはグランツーリスモのデザインが採用されたとされています。

幾多の困難を乗り越え

モーターショー発表後、RX-500はアメリカなど海外での展示のため、日本と海外を何度も行き来しました。しかし、その後長い間、その所在は不明となっていました。発見された時には、マツダの完成車倉庫に保管されていましたが、ホイールは外され、ボディにも損傷が見られる状態だったと伝えられています。

その後、広島市交通科学館の尽力によって、2008年に走行可能な状態に修復されました。この奇跡的な復活劇は、多くの人々の感動を呼びました。2014年には、イギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにも展示され、世界中の人々にその姿を見せつけました。修復作業の中で、当初キャビン前方に搭載されていたバッテリーは、リア部エンジンスペース（右リアフェンダー上部）に移設され、ブースターケーブルの接続コネクターが追加されているという変更点も確認されています。

RX-500は、ただ一台しか製作されなかった幻のスーパーカーです。その存在は、マツダの技術力の高さ、そしてロータリーエンジンへの情熱を象徴するものでしょう。現在も広島市交通科学館で大切に保管されており、その未来への継承が期待されています。

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