マツバラン属

マツバラン属（Psilotum）について

マツバラン属は、シダ植物の中でも特異な形態を持つ一群であり、その特徴的な姿は植物学者の間で長らく議論の対象となってきました。地上部も地下部も、ほぼ茎のみで構成され、根を持たないという独特な構造が特徴です。

特徴

マツバラン属の植物は、常緑性の多年生草本であり、着生植物として他の植物や岩の上などに生育します。地下茎は二叉分枝を繰り返し、内部には菌糸を含む細胞層があります。この菌糸は、マツバラン属が養分を吸収する上で重要な役割を果たしていると考えられています。また、根を持たない代わりに、地下茎を這わせて基盤に付着します。

地上茎は円柱状または扁平で、こちらも二叉分枝を繰り返します。葉は持たず、茎の表面から突き出した鱗片状の突起があるのみで、これには維管束は含まれていません。胞子形成は、茎の上部の側面に、3つの胞子嚢が合着した単体胞子嚢群の形で行われます。胞子から発芽した配偶体は地中で塊状に成長し、葉緑体を持たず、内部に菌糸を含んでいます。

種と分布

マツバラン属には、以下の2種が知られています。

マツバラン（Psilotum nudum）：世界中の熱帯から亜[[熱帯]]にかけて広く分布しています。日本にも自生しており、樹木や岩などに着生します。
*ソウメンシダ（Psilotum complanatum）：マツバランと同様に熱帯域に分布しますが、日本では自生していません。マツバランに比べて茎が細く、柔らかく垂れ下がる性質を持ち、断面が扁平で、分枝が同一平面上になる特徴があります。

これらの2種は、共に着生または岩の隙間に生息しますが、基盤に直接付着するのではなく、隙間に溜まった腐植や他の着生植物の根元、木生シダの幹表面の柔らかい部分などに地下茎を這わせるように生育します。

分類

マツバラン属は、その特異な形態から、かつては地上に最初に出現したシダ植物との系統関係が議論されていました。現在では、ハナヤスリ類に近縁であると考えられており、イヌナンカクラン属と共にマツバラン科に分類されるのが一般的です。ただし、マツバラン科を単独の科として扱う説もあります。

マツバラン属には、上記の2種以外にも学名のついた型が複数存在しますが、それらの分類については、今後のさらなる研究が必要とされています。

まとめ

マツバラン属は、根を持たず、茎のみで構成された特異な形態を持つシダ植物です。世界中の熱帯から亜[[熱帯]]にかけて分布し、着生植物として多様な環境に適応しています。その分類については、現在も研究が進められており、今後の新たな発見が期待されます。

参考文献

海老原淳、『日本産シダ植物標準図鑑 I』、(2016)、株式会社学研プラス
* 岩槻邦男編、『日本の野生植物　シダ』、(1992)、平凡社

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