マテウス・フォン・コリン

マテウス・カジミール・フォン・コリン

マテウス・カジミール・フォン・コリン（Matthäus Kasimir von Collin、1779年3月4日 - 1824年11月23日）は、19世紀初頭のオーストリアで活躍した多才な人物です。彼は作家、詩人、そして教育者として知られ、特に現在では、フランツ・シューベルトが彼の詩に作曲したいくつかの歌曲によって広くその名が知られています。

生涯

コリンは、1779年にウィーンで生まれました。父は高名な医師であったハインリヒ・ヨーゼフ・コリン、母はエリーザベト・エートレ・フォン・フィヒトルです。兄には、劇作家として知られ、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの序曲『コリオラン』のインスピレーション源となった戯曲を書いたハインリヒ・ヨーゼフ・フォン・コリンがいました。

学問の道に進んだ彼は、1801年に法学の博士号を取得します。その後、アカデミックなキャリアを積み、1808年には現在のポーランドにあたるクラクフのヤギェウォ大学で、美学および哲学史の教授に就任しました。故郷ウィーンに戻ってからも教育分野での貢献は続き、経済学の専門課程設立にも尽力しました。

学問的な活動と並行して、コリンは早くから文学への深い情熱を燃やしていました。彼は精力的に詩や戯曲を創作し、中でも作曲家ペーター・フォン・ヴィンターのために書かれた戯曲『オシアン』などが知られています。また、彼は当時のウィーンにおける文芸ジャーナリズムの世界でも重要な役割を果たしました。1814年には「一般文学新聞」（Allgemeine Literatur-Zeitung）を創刊し、さらに1818年には権威ある文芸誌「ウィーン文学年鑑」（Wiener Jahrbücher der Literatur）を立ち上げました。これらの定期刊行物の創刊者として、コリンはウィーン・ロマン主義文学運動の中心人物の一人となり、その発展に大きな影響力を持ちました。

彼の劇作品、特にオーストリアの歴史を題材としたものは、後のオーストリア演劇史における重要な作家であるフランツ・グリルパルツァーの歴史悲劇に先駆けるものとして評価されています。

教育者としての特筆すべきキャリアとしては、1815年からフランス皇帝ナポレオン1世とその皇妃マリー・ルイーズの間に生まれた息子、ライヒシュタット公フランツ（当時はパルマ公）の教育係を務めたことが挙げられます。この役割は、当時のヨーロッパ政治史とも関わるものであり、コリンの社会的地位の高さを物語っています。

マテウス・フォン・コリンは1824年にウィーン郊外のエベンダで亡くなりました。当初はペンツィング墓地に埋葬されましたが、後にヒーツィング墓地に移されました。

主な作品

コリンの文学作品の中でも、特にシューベルトの作曲によって広く知られるようになった詩がいくつかあります。

光と愛（Licht und Liebe, シューベルト歌曲 D352）
こびと（Der Zwerg, シューベルト歌曲 D771）
悲しみ（Wehmut, シューベルト歌曲 D772）
夜と夢（Nacht und Träume, シューベルト歌曲 D827）

戯曲作品としては、以下のようなものがあります。

ベラスの戦い（Belas Krieg mit dem Vater, 1808年）
好戦的なフリードリヒの死（Der Tod Friedrichs des Streitbaren, 1813年）

コリンは、彼の存命中、ウィーンの文学界や教育界において重要な存在でしたが、今日ではシューベルトの美しい旋律に乗せられた彼の詩によって、多くの音楽愛好家や文学ファンに記憶されています。

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