マテルヌス・キュネギウス

マテルヌス・キュネギウス：異教迫害を行ったローマ帝国の高官

マテルヌス・キュネギウス（Maternus Cynegius、没年388年3月14日）は、ローマ帝国後期の高官であり、オリエンス道長官や執政官を歴任しました。彼は、異教迫害の一環として古代ギリシアの聖地を破壊したことで、歴史に名を残しています。

生涯

キュネギウスはヒスパニア出身のキリスト教徒であったと考えられています。381年から383年の間に、テオドシウス1世によって皇帝の財務官であるコメス・サクラルム・ラルギティオヌムに任命されました。その後、法の起草者であるクァエストル・サクリ・パラティを経て、384年にはオリエンス道長官となりました。

オリエンス道長官として、キュネギウスは異教の生贄儀式を禁止し、386年にはエジプトやシリアの非キリスト教寺院・神殿を破壊しました。彼はテオドシウス1世の方針からも逸脱し、反ユダヤ人法の制定にまで及んでいます。

司教であるアパメアのマルケッルスと共に行った東方視察では、マルケッルスの強い勧めもあり、彼は様々な破壊活動を行いました。その例として、以下のものが挙げられます。

エデッサの神殿群（もしくはカルラエのルナ神殿）
アパメアのゼウス・ベロス神殿（セプティミウス・セウェルスらが神託を受けた地を含む）
パルミラのアッラート神殿

388年、キュネギウスは執政官に任じられましたが、同年のうちにベリトスで死去しました。

業績と評価

キュネギウスは、テオドシウス1世のミッソリウムを授与された高官の一人であり、その中に描かれた人物の一人であると考えられています。また、スペインのカランケで考古学者によって発見された別荘は、キュネギウスのものである可能性があります。

キュネギウスの異教迫害は、当時のキリスト教徒による異教に対する不寛容さを示す一例として、歴史的に重要な意味を持っています。彼の行動は、古代世界の宗教的景観に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

まとめ

マテルヌス・キュネギウスは、ローマ帝国後期において権勢を振るった高官であり、異教迫害という負の遺産を残しました。彼の生涯と業績は、当時の社会情勢や宗教対立を理解する上で、重要な手がかりとなります。

参考文献
Jones, Arnold Hugh Martin, John Robert Martindale, John Morris, The Prosopography of the Later Roman Empire, Volume 1, Cambridge University Press, 1992, ISBN 0-521-07233-6, p. 235-236.
Olszaniec, Szymon (2013). Prosopographical studies on the court elite in the Roman Empire (4th century A. D.)* Wydawnictwo Naukowe Uniwersytetu Mikołaja Kopernika [S.l.] ISBN 8323131430.

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