アパメア

アパメア：古代シリアの繁栄都市

アパメア（Apamea）は、現在のシリア北西部に位置する古代都市の遺跡であり、かつてはセレウコス朝の重要な都市として栄えました。この記事では、アパメアの歴史、都市の特徴、遺跡、そして聖書との関連について詳しく解説します。

歴史

アパメアは、もともとパルナケ（Pharnake）と呼ばれていましたが、アレクサンドロス大王の征服後、一時的にペラ（Pella）という名で呼ばれました。紀元前300年頃、セレウコス朝の創始者であるセレウコス1世によって拡大・要塞化され、彼の妻アパメー（Apama）にちなんでアパメアと名付けられました。

セレウコス1世は、アパメアを軍事的な拠点として重視し、兵站基地を置き、多数の戦象や馬を集めました。アパメアは、東方との交易路と、オロンテス川沿いにエジプトから北方へ至る路が交わる地点に位置していたため、商業的にも繁栄し、最盛期には人口が50万人に達したと推定されています。

アパメアは、首都アンティオキア、外港セレウキア・ピエリア、西の港ラオディケイアと並んで、「シリアのテトラポリス」（四大都市）と呼ばれました。

ローマ時代

紀元前64年、グナエウス・ポンペイウスによってローマに併合されたアパメアは、その後も重要な都市として存続しました。ユリウス・カエサルに対する抵抗や、ユダヤ戦争における市民の行動など、歴史的な出来事にも関わってきました。

終焉

7世紀には、サーサーン朝ペルシャのホスロー2世によって破壊されましたが、一部は修復され、イスラム帝国時代にはファミアまたはファーミーヤと呼ばれました。十字軍時代には、アンティオキア公国のタンクレードによって占領されましたが、1152年の大地震によって壊滅的な被害を受け、再建されることはありませんでした。

史跡

アパメアの都市遺跡は、オロンテス川を見下ろす台地上の200ヘクタールに及ぶ広大な面積を占めています。都市の一部は古代の城壁で囲まれており、アクロポリスは現在カラート・アル＝ムディク（Qal’at al-Mudik）と呼ばれています。

遺跡には、2世紀頃に建設された長さ約1,600mの列柱道路や、劇場、教会の廃墟などが残っています。1930年代から発掘調査が行われ、多数の遺物、特にモザイクが発見されています。

聖書における記述

エルサレムにおける聖書の二つのアラム語訳（タルグーム）において、シェファム（Shepham）という地名はアパメアに等しいとされています。

著名な市民

アパメアは、多くの著名な人物を輩出しました。

アルキゲネス（Archigenes）：医学者
ポセイドニオス（Posidonius）：哲学者
テオドレトス（Theodoret）：5世紀の神学者
アリスタルクス（Aristarchus）：70人の使徒の一人
アパメアのヌメニウス（Numenius of Apamea）：2世紀の哲学者
イアンブリコス（Iamblichus of Chalcis）：ネオプラトニズムの哲学者

アパメアは、その豊かな歴史と文化遺産から、古代シリアにおける重要な都市の一つとして、今日でもその名を残しています。

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